2018年03月18日
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2018年03月18日
『犬神家の一族』 (76年)、『人間の証明』(77年)に続く、角川映画第三弾(78年5月公開のドキュメンタリー映画『野性号の航海 翔べ 怪鳥モアのように』は除外)となる『野性の証明』 は、前作同様に森村誠一の小説が原作(最初から映画化を前提としていた)で、監督も同じく佐藤純彌が手がけ、78年10月7日に公開。ちょうど1年前公開の『幸福の黄色いハンカチ』(松竹)で、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞とブルーリボン賞主演男優賞を獲得した高倉健の主演作品(角川映画初出演)であり、「角川三人娘」の長女と言うべき薬師丸ひろ子のスクリーン・デビュー作でもあった。その薬師丸の劇中のセリフ「お父さん、こわいよ!なにか来るよ。大勢で、お父さんを殺しに来るよ! 」を用いたCMも功を奏して、1978年度邦画配給収入第1位に輝く興行成績を記録している。
「野性の証明」(C)KADOKAWA1978
音楽も『犬神家の一族』『人間の証明』と同じく大野雄二が音楽を担当。彼が作曲、山川啓介が作詞を手がけた主題歌「戦士の休息」の歌唱に起用されたのが、GSブーム末期にズー・ニー・ヴーのヴォーカリストとして活躍し、『野性の証明』より3カ月早く公開され大ヒットした映画『キタキツネ物語』(サンリオ)の主題歌「赤い狩人」を歌って再び注目を集めていた町田義人であった。
町田義人は、1946年9月2日、高知県出身。地元の土佐高校卒業後、18歳で上京し成城大学経済学部に入学。二年生の時に土佐高校の同窓で東大生の田村守と再会し、フォーク・デュオ「キャッスル&ゲイツ」を結成する。その後カントリー&ウエスタン・バンドで活動していた明治大生の上地健一(ベース、ヴォーカル)が参加。67年9月にニッポン放送の人気番組『バイタリス・フォーク・ビレッジ』のためにレコーディングした、田村作曲のオリジナル「おはなし」が好評を博し、フォーク・ファンたちに広く認知される存在となった。翌68年3月には同番組の人気投票で第1位に選出されるまでになるが、ほぼ同時期にグループは解散。町田と上地はズー・ニー・ヴーに参加し、田村は一般企業に就職した。ちなみにキャッスル&ゲイツは間もなく新メンバーで再編され、69年1月に「おはなし」でレコード・デビュー。72年まで活動を続けている。
ズー・ニー・ヴーは、町田と同じ成城大経済学部に通う山本康生(リード・ギター)が大学のクラスメイトである大竹茂(ドラムス)と共にメンバーを集めて結成(当時は「ズーム・ブーム」という名前だった)。彼らの他に塚谷茂樹(ベース/明治学院大生)、桐谷浩史(キーボード/明治大生)、そして町田(ヴォーカル)と上地(ヴォーカル、パーカッション)というラインアップで、渋谷のサパークラブ『カバーナ』のハウスバンドとして活動を始め、当時、日本の洋楽ファンの間でブームとなりつつあったR&B(リズム・アンド・ブルーズ)ナンバーを主なレパートリーとしていた。特にサム&デイヴを意識した町田と上地のツイン・ヴォーカルが音楽関係者たちの間で評判となり、68年10月にR&Bヒットのカヴァー集で異例のアルバム・デビュー。11月にはデビュー・シングル「水夫のなげき」(作詞・山上路夫/作曲・村井邦彦)をリリースした。
残念ながらデビュー曲は不発に終わったが、翌69年4月にリリースしたセカンド・シングル「涙のオルガン」のB面曲「白いサンゴ礁」がオリコン18位まで上る初ヒットとなり、一躍人気GSの仲間入りを果たす。ただ時期が悪かった。すでにGSブームは終焉を迎えており、R&Bファンたちから一目置かれる存在であったものの、その後ヒットが続かず、結局70年2月にリリースした4枚目のシングル「ひとりの悲しみ」(翌年「また逢う日まで」と改題し尾崎紀世彦がヒットさせた)を最後に町田は脱退。ズー・ニー・ヴーはメンバーを入れ替えながら活動を続けるが71年夏に解散している。
町田はソロ・シンガーとして再スタートを切り、71年6月に初ソロ・シングル「自由への旅路」をリリース。以後「奇跡は一度でいい」(71年)、「悲しみの果てる時」(72年)、「行きどまり」(76年)、「裏町マリア」(77年)等のシングルとアルバム3枚をリリースするが鳴かず飛ばずで、彼の名前が再び表舞台に登場したのは、「ガンダーラ」で大ブレイク直前のゴダイゴが音楽を担当した映画『キタキツネ物語』の主題歌「赤い狩人」(作詞・奈良橋陽子、三村順一/作曲タケカワユキヒデ)の歌唱者に抜擢された時であった。78年5月に公開された『キタキツネ物語』は大ヒットを記録。主題歌もオリコン86位まで上り、町田義人の名をズー・ニー・ヴー時代を知らない世代までにも知らしめたのである。
町田にとって、さらに追い風となったのが映画『野性の証明 』の主題歌「戦士の休息」で、30万枚以上のセールス(累計85万枚とも言われている)を記録し、オリコン最高位6位にランク。町田の歌手キャリアの中で最大のヒットとなった。伝説の男・町田義人はここに完全復活を遂げたのである。その後も『長距離ランナー』(79年)、『YOU&ME』(79年)、『WHISPER BLUE』(81年)等のオリジナル・アルバムや各種編集アルバムをコンスタントにリリースしている他、『宝島』(78年)、『サイボーグ009 超銀河伝説』(80年)、『三国志』(82年)などアニメ作品の主題歌、フジテレビ『おれたちひょうきん族』の「タケちゃんマンロボ」のテーマ曲、ロッテ「小梅ちゃん」や資生堂「オーデコロンモア」といったCMソング、CMナレーションも多数手がけ、さらにはミュージカル、声優と幅広い分野で活躍している。現在は音楽活動を休止中で海外に居を移しており、一時期オーストラリアで陶芸家として活動していたこともあるという。
ズー・ニー・ブー「白いサンゴ礁」町田義人「戦士の休息」「赤い狩人」「長距離ランナー」ジャケット撮影協力:中村俊夫
角川映画 シネマ・コンサート
●日時
2018年4月13日(金)開場 18:00 / 開演 19:00
2018年4月14日(土)開場 13:00 / 開演 14:00
●会場
東京国際フォーラム ホールA
●料金
全席指定 ¥9,800(税込)※未就学児入場不可
●上演作品
「犬神家の一族」「人間の証明」「野性の証明」
※各映画の上映は全編上映ではございません。各映画のオリジナル映像を元に特別に編集されたハイライト映像に合わせて、生演奏の音楽でお楽しみ頂く、最新のライブ・エンタテインメント=シネマ・コンサート形式で上演致します。予めご了承ください。
●出演
・大野雄二と“SUKE-KIYO”オーケストラ
大野雄二(音楽監督・Piano,Keyboards) / 市原 康(Drums) / ミッチー長岡(Bass) / 松島啓之(Trumpet) / 鈴木央紹(Sax) / 和泉聡志(Guitar) / 宮川純(Organ) / 佐々木久美(Vocal、Chorus) / Lyn(Vocal、Chorus) / 佐々木詩織(Vocal, Chorus) / MiMi(Hammered Dulcimer) / 他
・ゲストボーカル:松崎しげる:「戦士の休息」歌唱決定! / ダイアモンド☆ユカイ:「人間の証明のテーマ」歌唱決定!
・スペシャル・トークゲスト:石坂浩二
≪著者略歴≫
中村俊夫(なかむら・としお):1954年東京都生まれ。音楽企画制作者/音楽著述家。駒澤大学経営学部卒。音楽雑誌編集者、レコード・ディレクターを経て、90年代からGS、日本ロック、昭和歌謡等のCD復刻制作監修を多数手がける。共著に『みんなGSが好きだった』(主婦と生活社)、『ミカのチャンス・ミーティング』(宝島社)、『日本ロック大系』(白夜書房)、『歌謡曲だよ、人生は』(シンコー・ミュージック)など。最新著は『エッジィな男 ムッシュかまやつ』(リットーミュージック)。
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