2016年05月15日
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2016年05月15日
二人で微笑んだ あの日の思い出が
走馬灯のように 空しく揺れていた
ザ・テンプターズのデビュー曲「忘れ得ぬ君」の1節です。この曲を作詞・作曲してヴォーカルもとっていたザ・テンプターズのリーダー松崎由治氏を覚えていますか? ザ・テンプターズ解散以来あまり表舞台に登場しないため、忘れられた存在になりつつありますが、彼の存在がザ・テンプターズの成功の原動力であったことは、もっと評価されるべきではないでしょうか。
【作家として】
「忘れ得ぬ君」「神様お願い」「おかあさん」「雨よふらないで」等のヒット曲を作詞・作曲(「おかあさん」は補作詞、「雨よふらないで」は作曲のみ)していますが、彼の歌詞の特徴は文学的表現を用いることにあるような気がします。少ない言葉数でその背景を想像させるといった、俳句的なアプローチを行っています。冒頭に書いた「忘れ得ぬ君」の歌詞などはその典型ではないかと思います。
作曲の特徴としてはマイナー調を得意としていますが、歌謡曲調のベッタリとしたマイナーではなく、どこか乾いていて明るささえ感じさせるような作りになっています。「神様お願い」では、Amで始まり、歌いだしの“神様~”のところでFになるところや、「雨よふらないで」では同じくAmで始まりますが、“雨に~”の歌い出しではDmとなっています。このように、しゃれたコード・チェンジが彼の曲を特徴づけているような気がします。
【ギタリストとして】
「純愛」でのイントロと間奏。「エメラルドの伝説」での間奏。「忘れ得ぬ君」のイントロ。
どれも曲を印象付けるソロです。この人のギターワークは、あまり類を見ないもので、ライナーノーツにはスパニッシュ・ギターなどと書かれていますが、確かにフラメンコ的な要素があるように聞こえます。16分音符を多用し、独特の間からタタ・タッタ・タッタ・タタタ・タァ~(判りにくいでしょうが、「忘れ得ぬ君」のイントロです。)という感じの奏法を得意として、オリジナル曲に独特の色を付ける個性派ギタリストです。
【歌手として】
「忘れ得ぬ君」「おかあさん」「若者よ愛を忘れるな」で聴けれるように、独特の泣き節を持っています。この部分は功罪併せ持っていて、「忘れ得ぬ君」では良い方向に働いていた泣き節も、「おかあさん」ではちょっとクサさを感じさせます。歌詞にもよりますが、彼の唱法は独特ゆえ、時には両刃の剣となることもあるようです。
このように、ザ・テンプターズの創作力は彼がけん引していたことがわかります。そんな彼も、ザ・テンプターズ解散後はあまりステージに立つこともなく(日劇最後のウエスタンカーニバルの際にメンバー全員で再結成ミーティングが行われたとの噂もありましたが…)、一部で死亡説も流れました(デマだったようです)。ともあれ、才能あふれた人ですので、再び表舞台に出てきてほしい人です。4月16日。松崎由治氏は68歳になりました。
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