2018年06月15日
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2018年06月15日
50年前の今日6月15日(1968)はザ・ジャガーズの「キサナドゥーの伝説」のリリース日だった。
1年前の67年6月1日に「君に会いたい」でレコード・デビューしたジャガーズのシングル盤第4弾がこのイギリスのデイブ・ディー・グループの大ヒット曲のカバーであった。
実は同時デビューを飾ったザ・カーナビ―ツも前年の10月にシングル盤第3弾としてやはりデイブ・ディー・グループのヒット曲「オーケイ!」をカバーしてヒットさせていたのだから面白い。このちょっとユニークなイギリスの人気バンドは正式名を「デイブ・ディー、ドジー、ビーキー、ミック・アンド・ティッチ(略称DDDBM&T)」と云い長ったらしくて覚え難いので日本では発売2作目となった「オーケイ!」以降私が勝手にデイブ・ディー・グループと呼ぶことにしたのである。
「キサナドゥーの伝説」(The legend of Xanadu) は彼らのシングル11作目にして初めて念願の全英ヒット・チャート第1位に輝いた大ヒットで日本でも5月にオリコン11位にチャートされている。因みに9作目のシングル「オーケイ!」は全英4位、オリコン3位、10作目の「ザバダク!」は全英3位、オリコン73位のヒット曲だった。65年にスコットランドで結成された彼らはハニーカムズを育てた名プロデューサーで作詞・作曲チームのアラン・ブレイクリーとケン・ハワードの手によってフィリップス・レコードの傍系レーベルのフォンタナから65年暮にデビューしている。勿論「オーケイ!」もこの「キサナドゥーの伝説」もハワード=ブレイクリーの作詞作曲である。
60年代のブリティッシュ・インヴェイジョンの数多のポップ&ロックのバンドのなかでもそのユニークなエキゾティックで郷愁的なサウンドとキャッチ―で親しみのある万人向きのメロディで人気を博した彼らは飛び抜けて異色の存在であった。この日本語版の訳詞はシャンソンなどの名訳詞家から歌謡曲のヒット作詞家、後に作家に転身したなかにし礼に依頼して書かれたもので、続けて私が彼に発注したザ・テンプターズの新曲がなんと「エメラルドの伝説」と云うタイトルであった。“伝説”ものが2枚同じ発売日になるので一瞬戸惑ったが相乗効果を生むかも知れないと思い直しそのまま進めた。
ジャガーズの前作シングルの「マドモアゼル・ブルース」とは発売の間隔が5か月も空いてしまったが、実はこの間にザ・ジャガーズのリーダーの宮ユキオがメンバー間の金銭トラブルからグループを脱退して、急遽リーダーがサイド・ギターの宮崎こういちに代わり、ドラマーとして新人の浜野たけしが加入するという出来事があったのである。その新生ジャガーズの第1弾がこのユニークで元気なスパニッシュ=ラテン調の曲であった。オリジナル盤ではデイブ・ディーが歌いながら鞭を揮うのがサウンド的にも大きなフックになっているが、ジャガーズ・ヴァージョンはリード・ギターの沖津ひさゆきがギターでエフェクトを駆使して鞭の音を表現しているのがミソである。ヴォーカルの岡本信は鞭ではなくマラカスを振っている。オリジナルはブラスを加えて雰囲気を盛り上げているが、ジャガーズはコンガ、ボンゴなどすべてメンバーだけでレコーディングを仕上げている。ライブでは沖津のイントロのギターが素晴らしい聴きものとなっていた。メンバー3人が鬼籍に入りもうあの素晴らしい演奏が聴けないと思うと無念である。オリコン・シングル・チャートは20位を記録した。
なお“キサナドゥー”(ザナドゥと同じ)とは色々な分野で広く使われている名称だが語源はモンゴル帝国(元)のクビライがモンゴル高原南部に築いた夏の都(現在上都遺跡として世界遺産となっている)で13世紀ごろ栄えた。18世紀のイギリスの詩人コールリッジが歓楽の都として歌って以来幻想的な名前として使われるようになり、桃源郷(シャングリラ)のイメージ等一種の理想郷を表現することが多い。オリビア・ニュートン=ジョン主演のミュージカル映画『ザナドゥ』や嘗ての六本木のディスコの名前でもお馴染みだろう。近年ではアニメやゲームのタイトルやキャラクターなどでもよく使われる。
この歌の場合、理想郷というより砂漠の先のどこか荒涼とした不毛だが神聖な場所がイメージされているのがイギリスらしい。なかにし礼の日本語詞では“砂漠の中に眠る花園”と謳われている。
追記:このシングルは本来「二人だけの渚」(フクチミホコ訳詞、Alain Bashung詩曲)のB面曲として発売されました。タイトルは当時は「キサナド―の伝説」と表記されています。
ザ・ジャガーズ「マドモアゼル・ブルース」「キサナドゥーの伝説」ジャケット撮影協力:鈴木啓之
≪著者略歴≫
本城和治(ほんじょう・まさはる):元フィリップス・レコードプロデューサー。GS最盛期にスパイダース、テンプターズをディレクターとしてレコード制作する一方、フランス・ギャルやウォーカー・ブラザースなどフィリップス/マーキュリーの60'sポップスを日本に根付かせた人物でもある。さらに66年の「バラが咲いた」を始め「また逢う日まで」「メリージェーン」「別れのサンバ」などのヒット曲を立て続けに送り込んだ。
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