2015年10月10日

GS時代のガールズ歌謡を代表する名曲、中村晃子「虹色の湖」

執筆者:丸芽志悟

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今から48年前、1967年(昭和42年)の本日10月10日、中村晃子のシングル「虹色の湖」が発売となった。35.5万枚の売り上げを記録し(オリコン調べ。但し、発売がチャート公式集計のスタートに2か月ほど先駆けているため、実際の売り上げ枚数は確実にその数字を上回ると思われる)、GS時代のガールズ歌謡を代表する名曲として現在も幅広い世代に愛されているこの曲だが、歌っている中村晃子にとってはまさに「起死回生の一曲」なのであった。


既に松竹映画「裸体」で62年女優デビューを果たし、青春映画のヒロインとして着実にステップアップを続けていた晃子は、当時の青春女優が通過する儀式の一つ、レコード歌手としてのデビューを、65年10月、19歳の時「青い落葉」で果たしている。以後、着実にシングル発売を重ねるものの、ことごとく不発。60年代後半のキングレコードは、決して歌手を使い捨てにせず慎重に育てるというポリシーを持っていたのか、あまりヒットが出なくともシングル発売を4枚以上重ねている歌手が多く(初期の朱里エイコを筆頭に、井上ひとみ、葉村エツコ、錦城ロコ、三井里子なども、今ならアルバムが出てもおかしくないほどの録音数を残している)、晃子も6枚目のシングルに至るまで我慢を重ね、7枚目に与えられたのがこの名曲「虹色の湖」だったのである。この曲が彼女のデビュー曲だと信じている人が意外に多いのも無理もない。ちなみに、キングと対照的にシングル盤の発売数が1〜2枚で終わった歌手の絶対数が多かったのが、同時期のテイチクである。

 

イントロから飛び出す重厚なドラムと印象的なベースライン、12弦ギターによるキラーメロディ(演奏は津々美洋とオールスターズ・ワゴン)。一聴してキングのものと解る、広大な奥行きを感じさせるエコーが全編を覆い、そして堂々と歌われるボーカルは、もはや女優の余技ではない。ビートの利いたサウンドながら、決してGSそのものと直結しているとは言い難いこの楽曲に決定的GS要素を与えたのは、むしろ翌年3月公開された映画「進め! ジャガーズ敵前上陸」での歌唱シーンではなかろうか。悪党に振り回される災難から逃れるため訪れた雪山(しかし、結局はここにも悪党の触手は伸びるのだ)のクラブにて、ジャガーズの演奏をバックに歌い踊る彼女。現在はカルト映画として再評価されている今作の中では数少ない、ガチでモッドなシーンの一つである。


さらに、惜しまれつつ去る6月亡くなった、戦後歌謡を代表するベテラン作詞家・横井弘が描き出した歌詞。古風な風景の中に光る「虹」や「幻」のイメージは、不思議とサイケデリックな幻想を浮きだたせる。そしてこの曲の中にある「湖」というモチーフは、その後の女性一人GS曲を語る際重要なキーワードとなった。山本リンダ「白鳥の湖」、涼川真里「湖に眠る恋」、浅尾千亜紀「湖は少女」、梢みわ「恋のバイカル」…そして「進め! ジャガーズ〜」で悲劇のヒロインを演じた尾崎奈々も、71年になって「再会の湖」をリリースしている。もっともその前作で68年9月発売された「赤い波」の方が、「虹色の湖」にもろ影響を受けた楽曲の一つとしてここでは語られるべきかもしれないが…。

 

この後、さらにGS的ファンタジーワールドを突き詰めた「涙の森の物語」や「なげきの真珠」など、中ヒットを繋げつつ、73年には細川俊之との「あまい囁き」、81年には「恋の綱わたり」で2度復活。その後も写真集発売などでコンスタントに浮上し続ける永遠のマドンナ。最近は「昭和歌謡ジュークボックス」でキング時代のレア音源が多々発掘されているので、若いファンにも是非聴いていただきたい。

中村晃子

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