2019年08月01日
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2019年08月01日
1975年8月1日、平山三紀(現表記は平山みき)の「真夜中のエンジェル・ベイビー」が発売された。
CBSソニー移籍後の第3弾として発売されたシングル。引き続き橋本淳=筒美京平コンビによる作品だが、前2作「熟れた果実」「愛の戯れ」がいわゆるフィリー・ソウルやバリー・ホワイトを思わせるサウンドだったのに対して、今回は日本コロムビアでの最終シングルだった「恋のダウンタウン」以来のロックンロール歌謡となっている。
この「真夜中のエンジェル・ベイビー」が「恋のダウンタウン」と比較してスピード感やロック度が格段にアップしているのはもちろんのこと、歌詞の面でも六本木だけを歌の舞台にしていた「恋のダウンタウン」から本作では“ヨコスカ”から“ヨコハマ”“ハラジュク”を経ての“ロッポンギ”といった具合に広域性と同時にクルマ移動による疾走感を強調している。登場する人物名もデビュー曲「ビューティフル・ヨコハマ」ではほぼ日本人だったのに対して、今回は“ジョニー”“マイク”“サミー”とぐっと国際度が増している。
この時期の橋本=筒美コンビは郷ひろみの「誘われてフラメンコ」に始まる一連の作品や浅野ゆう子による「セクシー・バス・ストップ」等のディスコ3部作を手掛け、コロムビアや東芝所属の歌手を中心として一時代を築いた後の意外な充実期といえるだろう。またCBSソニーで酒井政利プロデューサーのもとで平山を担当した白川隆三ディレクターは74年秋から新人歌手・太田裕美の楽曲において松本隆=筒美京平コンビの作品を起用したほか、本家フィラデルフィアのスリー・ディグリーズが来日中に吹き込んだ「にがい涙」でも筒美と接点を持った。
CBSソニー時代の平山三紀に対して筒美京平は全シングルの両面はもちろんアルバムへの書き下ろし曲も提供しているほか、コロムビア時代と同様に洋楽カヴァーのアレンジも自ら手掛けている。スリー・ディグリーズの「荒野のならず者」以外にストレートなソウル/ディスコ路線の曲は少ないが、以前よりコンテンポラリーで大人っぽい世界観の選曲となっている。
さらに特筆すべきはベストアルバムのリリース時にコロムビア時代の代表作4曲を再録音していることで、いずれもロック度/ソウル度の増したサウンドへとアップデートされている。とりわけラグタイム風だった「フレンズ」はキャプテン&テニールの「愛ある限り」を思わせるシンセポップへとリアレンジされており、最新型のサウンドを追求する筒美の飽くなき姿勢が窺い知れる。
「真夜中のエンジェル・ベイビー」の次のシングルは作詞に荒井由実を迎えたニューミュージック調のバラード「やさしい都会」となるが、B面の「あなたが来る店」はヴァン・マッコイ風の堂々たるディスコ・ナンバー。
再度ワーナー・パイオニアへとレーベル移籍後のシングル「マンダリンパレス」(79年)は「恋のダウンタウン」「真夜中のエンジェル・ベイビー」に続くアップテンポ・ナンバーだが、今回はジョルジオ・モロダー風のテクノ・ディスコで坂本龍一の弾くシンセサイザーをフィーチャーしている。
平山三紀「真夜中のエンジェル・ベイビー」「やさしい都会」スリー・ディグリーズ「にがい涙」写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
平山三紀「ビューティフル・ヨコハマ」「恋のダウンタウン」「マンダリンパレス」ジャケット撮影協力:鈴木啓之
≪著者略歴≫
榊ひろと(さかき・ひろと):音楽解説者。1980年代より「よい子の歌謡曲」「リメンバー」等に執筆。歌謡曲関連CDの解説・監修・選曲も手掛ける。著書に『筒美京平ヒットストーリー』(白夜書房)。
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