2019年05月31日
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2019年05月31日
70年代アイドルの中でも秀でて佳曲が多いことで知られるキャンディーズが1976年の春に放ったヒットが「春一番」だった。続いて出された10枚目のシングル「夏が来た!」は、季節感が重んじられていた当時のアイドル・ポップスを象徴するような流れであったが、前作までのヒットには及ばず。しかも翌年の夏に「暑中お見舞い申し上げます」がヒットしたことで、キャンディーズの夏うたとしての存在が少々薄まってしまったように思える。それでも週間チャート5位、年間72位は充分に立派な記録で、ランキングでは前々作の「ハートのエースが出てこない」を上回るヒットソングとなった。「春一番」と同様に、穂口雄右の作詞・作曲・編曲によるシングル「夏が来た!」がリリースされたのは1976年5月31日のこと。今から43年前に遡る。
キャンディーズのメインライターであった穂口氏が近年明かした話によると、「夏が来た!」はそもそも同じ渡辺プロに所属していた青木美冴のために作られた曲であったという。青木はこの前年にデビューしたアイドルで、結局この時期に出した新曲は穂口の作曲・編曲による「16才のメッセージ」となった。当時、渡辺プロの歌手たちが新曲を出す際に、社長だった渡邊晋の決裁を仰ぐ御前会議があったというのは一部ではよく知られた話。その席上で“春”の大きなヒットを飛ばした次にゲン担ぎで“夏”の歌をキャンディーズに歌わせようとしたことは想像に難くない。しかしこのことで、それまでのシングル10曲中6曲を手がけていた穂口がしばらく楽曲提供から離れ、シングルでは16枚目の「わな」までブランクが空いてしまう。また、1978年4月4日に後楽園球場で行われた伝説の解散コンサートでは、歌うことが予定されていながらコンサート全体の時間が押したためにカットとなり、当日はシングル作品では唯一歌われなかったという、ある意味、因縁の一曲になってしまったのだった。
シングル発売から約2ヶ月後の7月21日には、同名のアルバムもリリースされた。椎名和夫の作詞・作曲による「さよならバイバイ」や、岡田徹の作曲による「MOON DROPS」など、同年に名盤『火の玉ボーイ』を発表したムーンライダーズ(当時は鈴木慶一とムーンライダース)が楽曲提供及びアレンジと演奏で4曲参加している。ほかにシングル候補だったという「SAMBA NATSU SAMBA」や、ギタリストとして毎回レコーディングに参加していた水谷公生の作曲による「めぐり逢えて」などを収録。アイドルの域を遥かに超えた高水準の楽曲が散りばめられたアルバムとして評価が高い。ソロナンバーもあり、キャンディーズにとって歌手としてのステップアップが図られる機会になったことだろう。
ちなみにこの翌年、1977年夏のヒットとなった14枚目のシングル「暑中お見舞い申し上げます」(作曲・佐瀬寿一)には、元ザ・リガニーズの常富喜雄の作曲による没テイクが存在しているが、メロディもアレンジも「夏が来た!」のテイストを多分に踏襲したものであった。1998年にデビュー25周年と解散20周年を記念して出されたCD-BOX『CANDIES HISTORY 〜Best Selection Box 1973-1978〜』に「暑中お見舞い申し上げます Part 2」のタイトルで収録されて陽の目を見た後、廉価盤の『GOLDEN☆BEST キャンディーズ』などでも聴くことが出来るので、未聴のかたにはぜひお薦めしたい。
キャンディーズ「春一番」「夏が来た!」「暑中お見舞い申し上げます」青木美冴「16才のメッセージ」写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
ソニーミュージックOTONANO『キャンディーズ メモリーズ FOR FREEDOM』スペシャルページはこちら>
≪著者略歴≫
鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。
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