2017年10月29日
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2017年10月29日
グループ・サウンズ(GS)ブームが日本中を席巻する1年以上前に結成され、同じ事務所の後輩ワイルド・ワンズやタイガースほどの少女ウケする派手さには欠けるものの、その安定した演奏力で実力派GSとして玄人筋から高い評価を得ていたアウト・キャスト。80年代以降の“GS後追い世代”による再評価ムーヴメントの中で、彼らが67年に残した作品(「電話でいいから」「のっぽのサリー」等)が「日本最古のガレージ・パンク」という新たな視点からの解釈で見直され、パンク/ニューウェイヴを通過した若者たちの間では、現役当時を凌ぐ知名度の高さを誇っている。
アウト・キャストが結成されたのは1966年春のこと。ちょうど、スパイダースが「ノー・ノー・ボーイ」、ブルー・コメッツが「青い瞳」を発表直後で、のちにGSと呼ばれることになるビートルズ影響下に誕生した新しい和製ビート・グループが、次代の音楽シーンを担う新鋭として注目を浴びていた時期である。そんな時代の趨勢にいち早く目を付けたのが渡辺プロダクションで、同社所属のエレキ・バンド 「ブルー・エース」のギタリスト水谷淳が、会社の要請に従ってメンバーを集めたバンドであった。
メンバーは水谷以外、轟健二(ヴォーカル)、大野良治(ベース)、穂口雄右(オルガン)、中沢啓光(ドラムス)、片桐周一(ギター)という顔ぶれが揃うが、間もなくして片桐が脱退。ソングライティングの才能もあった藤田浩一(ギター)が後釜として参加し、ここに初期アウト・キャストの陣容が整うのである。
いわば渡辺プロダクションの第一号GS(当時はまだそんな言葉は無かったが)だったわけだが、当初はジャズ喫茶出演と所属歌手のバッキング演奏の仕事ばかりで、結局レコード・デビューは後輩のワイルド・ワンズに先を越され、辛うじて新人タイガースのデビュー約ひと月前という微妙な時期である67年1月25日にデビュー曲「友達になろう」をリリースしている。
以後、「愛することは誰でもできる」(4月)、「レッツ・ゴー・オン・ビーチ」(7月)、「一日だけの恋」(10月)、「愛なき夜明け」(168年1月)とアルバム1枚をリリースするが、その間に藤田と穂口が脱退。ナベプロGS第一号アウト・キャストは、皮肉にもGSブーム最盛期の68年3月に解散を迎えるのである。解散後、轟と水谷はアダムスを結成。デビュー曲の「旧約聖書」をはじめ4枚のシングルを残し69年まで活動。大野は新メンバーを集め新生アウト・キャストを再編するも、シングル1枚をリリースしただけで69年には活動を停止している。
このように、比較的地味な活動に終始し大ブレイクすることなく終わったアウト・キャストだが、さすが腕利きプレイヤー揃いの実力派GSだけあって、解散後のメンバーの動向が凄い。水谷(本名・水谷公生)はスタジオ・ミュージシャンとして、ベーシストの江藤勲と共に70年代以降の日本のポップス、歌謡曲のレコードの大半に参加しているとも言われている売れっ子ギタリストだし、轟(本名・松崎澄夫)は渡辺音楽出版のディレクターとしてキャンディースやアン・ルイスを手がけた後、アミューズ社長に就任。同社の副会長まで昇り詰めている。穂口は作曲家としてキャンディーズ「春一番」「微笑がえし」、アグネス・チャン「ポケットいっぱいの秘密」等のヒットを放ち、藤田は芸能プロダクション「トライアングル」の社長としてレイジー、菊池桃子、オメガトライブ等を育てた(09年他界)。大野はレコード・ディレクター/音楽プロデューサーとして活躍。中沢(本名・西川啓光)は鼓奏者である家業を継ぎ、純邦楽界打楽器奏者として活動し、音大で現代邦楽の講師も務めている。まさに音楽界の重鎮揃い。アウト・キャストを必殺仕事人GSと呼ぶ所以である。
そんなアウト・キャストのバンマスでもあった大野良治さんをお迎えしてのトーク・イベントが来月9日(木曜日)に新橋のライヴハウス『ZZ』で開催される。これまで情報量が少なかっただけに、このイベントで新事実が続々と明るみに出てくること必至。ぜひお見逃しないように!
『ダディ竹千代と中村俊夫の日本ロック昔ばなし⑮』
~必殺仕事人GSアウト・キャスト夜話~
出演:ダディ竹千代、中村俊夫
ゲスト:大野良治(元アウト・キャスト)
日時:2017年11月9日(木) 18:30(OPEN)/19:30(START)
料金:¥2,100(予約)/¥2,600(当日) ※別途ドリンク代
場所:新橋ZZ 東京都港区新橋4-31-6 B1
※電話予約受付中:03-3433-7120(17:00~23:00)
≪著者略歴≫
中村俊夫(なかむら・としお):1954年東京都生まれ。音楽企画制作者/音楽著述家。駒澤大学経営学部卒。音楽雑誌編集者、レコード・ディレクターを経て、90年代からGS、日本ロック、昭和歌謡等のCD復刻制作監修を多数手がける。共著に『みんなGSが好きだった』(主婦と生活社)、『ミカのチャンス・ミーティング』(宝島社)、『日本ロック大系』(白夜書房)、『歌謡曲だよ、人生は』(シンコー・ミュージック)など。
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