2018年03月20日

41年前の本日、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「サクセス」がリリース

執筆者:馬飼野元宏

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1977年3月20日、ダウン・タウン・ブギウギ・バンド9作目のシングル「サクセス」が発売された。この曲は資生堂化粧品の夏のキャンペーン・ソングとしてCMで頻繁に流され、オリコン・チャートの2位まで上昇する大ヒットとなり、「スモーキン・ブギ」「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」と並ぶ彼らの代表作となった。


最初から「サクセス」というタイトルは決まっていて、その言葉を歌詞に使ってほしい、というスポンサー側の意向もあり、つまりダウン・タウン・ブギウギ・バンド(以下:DTBWB)のリーダー宇崎竜童は、注文商品としてこの曲を作ったのである。なぜなら、当初はDTBWBが歌うことは予定になかったそうなのだ。歌手はプロ・アマ、あるいは男女を問わず、オーディションで決めるという話で、何十人かオーディションを行ったが決め手に欠けた。音楽制作のプロデューサーは、最終的に宇崎を指差し「自分たちでやれば」と言ったそうである。


スポンサー側からの反対は大きかったそうだが、それもそうだろう。それ以前の資生堂のCMといえば、おしゃれ産業の最たるもので、その年の春のキャンペーン・ソングには尾崎亜美の「マイ・ピュア・レディ」が使用され、それ以前にはりりィの「家へおいでよ」など、基本は女性歌手であった。イメージ的にもツナギ姿にサングラス、強面の男たちはとても化粧品購買層とは合わないと判断されたのも無理はない。


このキャンペーンには「働く女の人」というコンセプトが立てられていたそうである。かつて若い頃、モデルでバリバリに活躍していたティナという女性が、モデルを辞めキャリアウーマンに転身した、そういうコンセプトだったという。いかにも時代を感じさせる話だが、結果として音楽制作チームのプッシュもあり、DTBWBが自らの演奏と歌で「サクセス」を世に出すことになったのである。


ところが、この「サクセス」は、元々他人が歌う予定で書いた曲だけに、宇崎は夏らしくラテン・ロック的な曲調を考えていた。それはDTBWBとしては演奏したことのないタイプのサウンドであったので、バンドとしても新たな挑戦であった。抜群の疾走感をもつ前半の高速ラテン・ビートといい、CMで流れるサビの箇所で、叩きつけるようなドラムとヴォーカルのキメといい、サンタナを思わせるかっこよさである。また、宇崎竜童は前年6月の「横須賀ストーリー」で、山口百恵のシングル曲を夫人の阿木燿子と手がけて以降、百恵のメイン・ライターとしても脚光を浴びていたが、77年夏の百恵作品「イミテイション・ゴールド」には、「サクセス」と共通するスピード感と世界観がある。あくまで個人的な感想ではあるが、阿木燿子の描く「サクセス」のブラインドを開けた部屋と、「イミテイション・ゴールド」の西陽の強い部屋は、同じ部屋に思えるのだ。


そして、ここでトライしたラテン・サウンドはその後、DTBWBでも「乾いた花」などに取り入れられていくが、山口百恵のその後の宇崎作品にもラテン、レゲエ、スパニッシュといったロックのビート感とはまた異なる色が加わっていった。「美・サイレント」「横須賀サンセット・サンライズ」「謝肉祭」といった楽曲群である。


B面に回った「愛しのティナ」は、最初から「サクセス」と一緒の発注で制作され、こちらは同CMのヒロインである“ティナ”のイメージ・ソングとして作られた。宇崎得意のブルージーな旋律ではなく、ライト&メロウなタッチのナンバーで、ヴォーカルも宇崎ではなくベースの新井武士とリード・ギターの和田静男が歌っている。この曲はキャンペーンの後半からCMで流され、シングル盤は「愛しのティナ」の文字を大きくしたジャケットに変更された。



ちなみに、同CMのモデルをつとめたのは、ティナ・ラッツという女性である。“ティナ”というヒロイン名は彼女から来ているのだ。そして、この「サクセス」の好評を受け、資生堂の夏のキャンペーン・ソングは翌78年が矢沢永吉の「時間よ止まれ」、79年はツイストの「燃えろいい女」と、ロック系アーティストがつとめるようになるのであった。


DTBWBとしては、セールス的にも「サクセス」で再びピークを迎えたが、この次にリリースされた楽曲が、名曲の誉れ高い「身も心も」である。ソングライター宇崎竜童の幅の広さに驚かされるばかりの77年であった。

ダウン・タウン・ブギウギ・バンド「サクセス」「サクセス」別パターン(B面「愛しのティナ」の文字を大きくしたジャケット)ジャケット撮影協力:鈴木啓之


≪著者略歴≫

馬飼野元宏(まかいの・もとひろ):音楽ライター。月刊誌「映画秘宝」編集部に所属。主な守備範囲は歌謡曲と70~80年代邦楽全般。監修書に『日本のフォーク完全読本』、『昭和歌謡ポップス・アルバム・ガイド1959-1979』ほか共著多数。

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