2019年04月03日
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2019年04月03日
“あなたの心の隣にいるソニーの白雪姫”というキャッチフレーズで売り出された天地真理は、1971年10月に「水色の恋」でCBS・ソニーからデビューした。ポプコンこと“ポピュラーソングコンテスト”の前身である“69年作曲コンクール”にエントリーされていたアマチュアの作でありながら、オリコンチャートで3位のヒットに。続いてのセカンド・シングル「ちいさな恋」は、2月5日の発売後、3月13日のチャートで初の1位を獲得し、4月3日には4週連続1位を記録した。この次のシングル「ひとりじゃないの」がさらなるヒットとなり、人気のきっかけとなったドラマ『時間ですよ』でギターを抱えて歌っていた“となりのマリちゃん”はいよいよ国民的アイドルとなってゆくのである。
「ちいさな恋」はデビュー曲「水色の恋」のフォーク調の路線を踏襲しつつ、プロの作家に委ねられ、作詞が安井かずみ、作曲が浜口庫之助という珍しいコンビネーションの作品となった。ドラマ『時間ですよ』で注目を集めてデビュー曲「水色の恋」で火が付いていた天地真理のアーティストパワーを増大させ、決して派手な曲とはいえないながらも、1972年の年間9位の大ヒットを記録している。アレンジの馬飼野俊一は作曲の森田公一と共に初期のヒット作の多くを手がけて、清楚な白雪姫の歌世界を構築する重要な役割を担った。60年代のヒットメーカー・浜口庫之助は70年代に入っても作品を生み続け、前年には内弟子だったにしきのあきらが「空に太陽がある限り」をヒットさせたばかり。ちなみに「ちいさな恋」と同じ72年に浜口が世に送り出した作品に、石原裕次郎の「恋の町札幌」がある。
「ちいさな恋」がまだヒットしていた5月に発売された「ひとりじゃないの」は、オリコン1位、ミリオンセラーを記録して自己最大のヒットとなる。同期デビューの南沙織、小柳ルミ子と共に“新三人娘”の人気が定着し、アイドルソングの概念も完全に確立された感がある一曲といえる。作詞の“小谷夏”はドラマ『時間ですよ』の演出に辣腕を揮っていた久世光彦のペンネームで、作曲の森田公一はこの後、アグネス・チャン「ひなげしの花」やキャンディーズ「あなたに夢中」と、渡辺プロ所属の期待の新人たちのデビュー曲を手がけて見事にヒットさせている。5月に出された「ひとりじゃないの」で『第23回NHK紅白歌合戦』に初出場を遂げた天地真理は、作詞に山上路夫が起用された「虹をわたって」でもチャート1位を記録して、松竹で同名の映画も公開された。これが天地真理の初主演映画となる。同時期の72年10月にはTBSで冠バラエティ番組『真理ちゃんとデイト』も始まり、押しも押されもせぬトップスターとなった天地真理の人気は頂点に達したのだった。
天地真理「水色の恋」「ちいさな恋」「ひとりじゃないの」写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
≪著者略歴≫
鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。
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