2015年06月18日

60年代にレーシング・ドライヴァー兼ファッション・モデルとして一世を風靡した福澤幸雄の誕生日。

執筆者:中村俊夫

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今日6月18日は、60年代にレーシング・ドライヴァー兼ファッション・モデルとして一世を風靡した福澤幸雄の誕生日。もし生きていたら72歳。あの衝撃的な事故死から早くも46年の歳月が流れている。


1943年、ナチス・ドイツ占領下のパリで、福澤諭吉の孫である慶應義塾大学教授の父・進太郎とギリシャ人歌手の母アクリヴィの間に生まれた幸雄は、慶應義塾大学法学部在学中からいすゞやトヨタのレーシング・チームで活動する傍ら、その端正なルックスを活かしてファッション・モデルとしても活躍。マックスファクター、東レ、パナソニック等のイメージ・キャラクターも務めた。


当時、芸能人・文化人たちのサロン的様相を呈していた東京・飯倉のイタリアン・レストラン「キャンティ」の常連のひとりであり、そこで幅広い交友関係を培っていったが、中でもムッシュかまやつとの親交は深かった。国際レースやファッションショーでヨーロッパでの活動が多かった福澤は、現地で見聞きした音楽、ファッション、ダンスに関する最新情報をムッシュに伝授。それはスパイダースにフィードバックされ、やがて日本のポップス・シーンのトレンドになっていったのである。


1969年2月12日、静岡県のヤマハ・テストコースで福澤が運転する試験走行中のトヨタ7が事故を起こし激突炎上。彼は帰らぬ人となった。享年25歳。その若すぎる死を悼んで、生前親交のあった二人のミュージシャンが追悼作品を残している。


まずは、ムッシュの「ソー・ロング・サチオ」。作詞・作曲・編曲・歌はもちろん、バッキングの楽器すべてをムッシュひとりで演奏したこの曲は、キース・ジャレットが全楽器を手がけたワンマン録音アルバム『Restoration Ruin』にインスパイアされて、スパイダースのアルバム『明治百年すぱいだーす七年』(68年)の中で発表した「ミスター・タックス」に続くムッシュひとり多重録音作品で、69年5月25日リリースのスパイダース通算7作目のアルバム『スパイダース’69』に収録された。


ムッシュは翌70年2月に同曲を含むワンマン多重録音作品の集大成とも言える初ソロ・アルバム『ムッシュー』をリリースしているが、その中には幸雄の実妹福澤エミとデュエットした「ノー・ノー・ボーイ」や、彼女が作詞を手がけた「ペイパー・アシュトレー」も収録されている。


そしてもう一人は、福澤にとって慶應の先輩でありキャンティの常連でもあった作曲家・ピアニストの三保敬太郎。ムッシュ同様に生前の福澤からヨーロッパの最新音楽トレンドを伝授され、様々なアドバイスを受けていた彼は、福澤が好きだった「ネヴァー・マイ・ラヴ」「マシュ・ケ・ナダ」「ワン・ノート・サンバ」「ゴーイング・オウト・オブ・マイ・ヘッド」等のカヴァーに自作曲を加えた構成のアルバム『SOUND POESY SACHIO』を「三保敬太郎と彼のグループ」名義で69年11月10日にリリースしている。


このアルバム収録の「Remember Of Paris(パリの想い出)」は、伊集加代子のスキャットをフィーチャーした小粋なオリジナル・ボッサ曲をバックに福澤と三保がかつて訪れたパリの街の様子などを語っている秀逸なサウンド・コラージュ的作品。おそらく伝説のレーサー「サチオ」の肉声を聴ける唯一のレコードなのではないだろうか。
スパイダース アルバム’69(紙ジャケット仕様)  ザ・スパイダース

サウンド・ポエジー・サチオ  三保敬太郎と彼のグループ

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