2015年07月29日

ミッシング・アイドル キャッツ・アイ

執筆者:丸芽志悟

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特にこれといった関連物件のない日にお送りする、所謂雨傘企画「ミッシング・アイドル(B級~C級)」。ニッチアイドル担当がすっかり板についた筆者でありますが、今日取り上げるのは1977年5月25日デビューの女性デュオ、キャッツ・アイ。 


77年5月というと、ピンク・レディーが3枚目のシングル「カルメン'77」でいよいよ国民的アイドルへの道を驀進し始め、キャンディーズも安定した人気を更に加速し始めた頃(なのに2ヶ月後には…)。それと同時に、各レコード会社もその動きを察知して新たなアイドル・デュオ、若しくはグループの売り出しに必死になり始めたのである…と書き出したかったところだけど、さすがにピンクやキャンディーズのカリスマ性は安直にイミテーションを生み出させるものではなく、GS時代のような「百花繚乱」(若しくは玉石混淆)再びとはいかなかった。そこに敢えて送り出されたのが、大谷親江(ノン)と山中奈々(ナナ)からなるキャッツ・アイである。すらっと伸びた足が見る者の目を捉えて離さない(即ち筆者のツボ)、強烈なヴィジュアル・アピールの持ち主。


そのデビュー曲「アバンチュール」は、ピンクの健全なお色気路線を意識しつつ、音楽的にはどこか空振りした感がやっぱりテイチク=ユニオン・レーベルの宿命なんだなぁと感じさせる、逆に言えばマニアへのアピール度絶大な一曲。オリコンチャートでは95位に顔を出した程度のヒットに終わったが、ごく僅かな数の歌番組に姿を見せた彼女たちのフェロモンにやられてしまった青少年(当時)の数は、決して少なくないと思われる。


2枚目のシングル「めっきり冷たくなりました」(77年9月)の方が、当時耳にする頻度は高かったけど、こちらは意外にもチャート入りを果たしていない。本家ピンクが出演した雪印のアイス「宝石箱」のCMと混同して記憶してる人も、決して少なくないはず。
続く3枚目は、カルト的視点からすれば彼女らの代表作と思われる「導火線」(78年1月)。思わず「3倍アイスクリーム!」と叫びたくなるカウントダウンなど、意匠を凝らした佳曲ではあるものの、「UFO」の前ではさすがに不完全燃焼。B面は現代なら要注意歌謡曲指定確実の「大地震」。
そして78年5月には、4枚目のシングル「ジャンヌ・ダルク」とファースト・アルパム『キャッツ・アイ・ファースト』が同時発売された。英国のOMDより3年早く(!)歴史上の美女を歌ったシングルも話題にならず、更には同時期の木之内みどりの一件を彷彿とさせるメンバーの失踪という事態に見舞われ、この二枚を最後に活動を終了。シングルのB面では、丁度1ヶ月前に完結したキャンディーズの解散劇を意識したと思われる内容の「アンコール・アンコール」を歌っていた二人だが、まさかその曲が自らのスワンソングとなるとは、作詞した麻生香太郎にとっても寝耳に水だっただろう。そして、テイチク=ユニオンに於ける彼女たちのポジションは、双子デュオ、キューピットへと引き継がれた。


2003年には、このキャッツ・アイとキューピットの2組がレコードに残した楽曲を全て集めたCDがリリースされ、現在ではテイチク=クロニクルでも屈指のコレクターズアイテムとなっているが、その編纂の際、彼女たちが録音したビートルズのカヴァーが2曲発見されている。恐らく当時公開された、米国に於けるビートルズファンの熱狂ぶりを描いた映画「抱きしめたい」(ロバート・ゼメキス監督、制作総指揮はあのスティーヴン・スピルバーグ)に便乗して録音されたと思われるが、現在まで発表の機会を得ておらず、これは是非聴いてみたいところである。

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