2015年12月03日

1973年12月3日、フィンガー5の「個人授業」がオリコン・チャートで1位を獲得!

執筆者:馬飼野元宏

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1973年12月3日、フィンガー5の「個人授業」がオリコン・チャートで1位を獲得した。


和製ジャクソン5と呼ばれた、日本のキッズ・グループの最高峰・フィンガー5は、玉元一夫、光男、正男、晃、妙子の兄弟5人組。彼らのスタイルは、それ以前に日本の音楽シーンには存在しなかった画期的なものだったが、キャリアのスタートはインスト・バンドだったことを御存知だろうか。


返還前の沖縄で、父親がAサイン・バー(米軍から米兵相手の営業を許可された店)を経営していたことから、幼少時より店のジューク・ボックスから流れる洋楽に慣れ親しんでいた兄弟は、音楽に夢中になる。そして67年に一夫がギター、光男がドラム、正男がベースという編成で “オールブラザーズ”を結成。当初はベンチャーズを主体にしたインスト・バンドだった。兄弟の音楽への熱意に負け、一家はプロ・デビューを目指し上京を決意。晃がギター、妙子がオルガンで加入し歌ものバンドへと移行、5人は米軍キャンプでローリング・ストーンズやマーヴィン・ゲイを歌い、デビューのチャンスを待った。


上京して1年後の1970年6月20日、“ベイビーブラザーズ”の名前でキングレコードから「私の恋人さん」でデビュー。メンバーの自作曲でリード・ヴォーカルは三男の正男。だが通算3枚のシングルはヒットには結びつかず、72年8月25日、4作目「キディ・キディ・ラブ」リリース時にフィンガー5へと改名する。


当時の彼らに注目していたのが、キングのディレクター井岸義測だった。井岸の担当ではなかったが、その才能を惜しみ、自身が 移籍したフィリップス・レコードにフィンガー5を呼ぶ。そこでリリースされたのが「個人授業」だった。彼らは楽器を手放し、ジャクソン5ばりのダンスを取り入れる。そして、変声期に入っていた正男に代わり晃がリード・ヴォーカルとなった。


「個人授業」の作詞は阿久悠、作曲は都倉俊一。シャッフル・ビートの3コードロックンロール、ハイトーンの晃が担うソロ・パートや間奏で聴かせるフェイクの達者さ、ホーンを利かせたソウルテイスト溢れるアレンジと、どこを切っても文句なしの傑作で、小学生層を中心に、爆発的なヒットとなった。だが、晃はこの曲を渡された時「あまりピンと来なかった」と述懐しており、この成功に賭けていた長男・一夫を除いては、誰もここまでヒットするとは予想していなかったそうである。


実は、「個人授業」は同じ阿久=都倉が手がけた、山本リンダの「狂わせたいの」のB面「もっといいことないの」に手を加えた再利用曲なのだが、同社でキャロルを成功に導いた井岸のロックンロール・センスが注入されたことで、2曲の印象は大きく異なる。


フィンガー5の世界は、背伸びした小学生が体現する憧れのスクール・ライフだった。実際、「個人授業」の頃、晃と妙子はまだ小学生。サングラスをかけた小学生なんて、おませなことこの上ない。第2弾「恋のダイヤル6700」と第3弾「学園天国」では井上忠夫(大輔)がロックンロール・フレーバー溢れる痛快なナンバーを書き、これも大ヒット。「恋の大予言」「恋のアメリカン・フットボール」など、当時の流行を真っ先に取り入れた阿久悠の詞もあって、フィンガー5は瞬く間に当時の子供たちの心を捉えてしまった。



彼らの音楽的なベースは、井岸が呼び込んだ元デイ&ナイツのリーダー・三枝伸の影響が大きい。三枝はテンポの捉え方、フェイクの入れ方など、黒人音楽のフィーリングを彼らに注ぎ込み、アルバム曲やカヴァー曲のアレンジなどに腕を奮った。彼らのナンバーの随所にみられる掛け合いやフェイクの達者さは、レコーディング時に三枝のサジェスチョンで、メンバーたちが臨機応変に対応した結果だという。特に正男は最もブラックなセンスに長けていた。元々バンドから始まったグループだけにリズム感も抜群、ダンスのキレもいいのは当然。ブレイク時に流れていた学習机「オカムラ・ジュニア・デスク」のCMソングなどぶっ飛んだハード・ソウル・ナンバーで、当時の小学生たちは、フィンガー5を通して自然とファンキーなノリを体感していたのだ。彼らはブラック・ミュージックのフィールを子供たちに教えてくれた恩人である。


75年の渡米~帰国ののち78年に解散。兄弟数人でのグループ結成や03年の再結成を経て、現在は晃のみが音楽活動を行っている。

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