2015年06月05日

麻丘めぐみが「芽ばえ」でデビュー

執筆者:榊ひろと

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1972年の本日、麻丘めぐみが「芽ばえ」でデビュー。43年前のこと。

この曲を聴くと思い出すのが、近所のデパートの家電売り場で家具のようなステレオセットからエンドレスでリピート再生されていた光景だ。歌終わりの2重録音による“離れないわ”のリフレイン部分での彼女の泣き節と流麗なストリングスの響きが相まって、蒸し暑い夏の休日の午後のひとときに何とも甘酸っぱいムードを醸し出していたのである。フォーキーな曲調に弦アレンジというアイデアはビージーズの「マサチューセッツ」あたりにルーツを遡れるものだろうが、全体的な音像としてはヨーロッパ系のイージーリスニング楽団を思わせるもの。何よりもデビュー作にして麻丘めぐみの声質の美味しい部分を見抜く一方で、編曲はオーケストレーションを得意とする先輩格の高田弘に敢えて委ねた筒美京平の慧眼ぶりに改めて脱帽せざるを得ない。


また所属レーベルのビクターは竣工して間もない青山スタジオに最新型の16CHレコーダーと気鋭のエンジニア陣を擁しており、この曲でも豊潤なストリングスのサウンドをゴージャスな残響感と共に捉えることに成功している。オーディオ製品の店頭販促に用いられていたのは、人気急上昇中のアイドルの楽曲だからという理由だけでもなかった気がする。


大分生まれで大阪育ちの麻丘めぐみ。関西の芸能界で子役として活躍したうえで上京というパターンはいしだあゆみに続くものだが、一足先に歌手デビューしていた姉の後を追ったという意味では石田ゆりの方に近いのかも。さらに雑誌モデルとしての経験を経てアイドル歌手や女優に転身というステップも、同僚だった坂口良子をはじめ昭和40年代から頻繁に見られるようになった。


そんな彼女も今年でついに還暦を迎えるわけだが、この学齢でいう昭和30(1955)年度生まれというのは、新御三家の面々を含めてアイドルの当たり年でもある。それどころかミュージシャン、俳優からお笑いやスポーツ選手に至るまで各界のキーパーソンが勢揃いしている。やはりポスト団塊とプレ新人類の端境期に当たる世代だけに、時代を象徴し背負うような人材が輩出するのだろうか?

 

さてデビュー当初の麻丘めぐみのイメージ戦略としては、“時代劇のお姫様役”のような清純派を目指して髪型などを工夫したという。この背景には前年デビューし国民的アイドルになりつつあった“ソニーの白雪姫”・天地真理の存在が意識されていたことは想像に難くない。ところでこの両人さらに翌年デビューの浅田美代子も含めて、みんなイニシャルが同じ“A.M.”であることにお気付きだろうか? 「あ」で始める芸能人が多いのは五十音でもアルファベットでもトップという理由が嵐のデビュー後には定着しているようだが、マ行/M音がもたらす(とりわけ女性アイドルにおける)音響心理学的な効果というようなものを一度検証してみる価値がありそうだ。

麻丘めぐみ

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