2015年09月18日
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2015年09月18日
いなたいホンキートンク・ピアノとハーモニカで始まるオープニング曲に誘われて、レンガ造りのペントハウスのドアの札を返すと、そこには「探偵物語」の文字が……。今日、9月18日は松田優作主演のテレビドラマ『探偵物語』の放送が始まった日である。私立探偵:工藤俊作が、ギャングや警察、街のチンピラたちを向こうに回して、事件を捜査しているような、単に巻き込まれているだけのような…… そんな「日常」が描かれる作品で、1979年同日から1980年4月1日まで、日本テレビ系列で全27話が放送されている。放送中に80年代の幕開けを迎えることにも象徴されているように、テレビ新時代の到来を思わせる、何もかもが型破りなドラマだった。
ストーリーは骨太のハード・ボイルド風に進むものの、主人公の“工藤ちゃん”は硬派でも寡黙でもなく、とにかくナンパでよくしゃべる。しかも、セリフともアドリブとも付かないリアルな“間”の笑いを次々と差し込んでくるのだ。制作の裏話や楽屋ネタで埋め尽くされた松田優作自身による予告編ナレーションや、まるでエイプリル・フールに放送されることを逆手に取ったかのような最終回の不可思議なラストシーンなども含め、「シナリオ通りにしっかりと演技するドラマ」という枠組みを軽く飛び越えた、今までにない新しい何かを叩き付けられたような気分にさせられる…… それが『探偵物語』の魅力だった。
『探偵物語』における「新しい何か」の一つには、もちろん音楽も含まれる。オープニングテーマ「Bad City」(作詞・作曲:Casey Rankin、編曲:大谷和夫)、およびエンディングテーマ「Lonely Man」(作詞:Casey Rankin、作曲:大谷和夫・芳野藤丸、編曲:大谷和夫)、さらにBGM音楽までを一貫して担当していたのはバンド:SHŌGUN(ショーグン)。スタジオミュージシャンとして慣らした抜群の腕前を感じさせるタイトなプレイと、全編英語で歌われるクールなサウンドは、見事に『探偵物語』の“新しさ”を捉えていた。1979年4月から放送されたドラマ『俺たちは天使だ!』の主題歌「男達のメロディー」で一躍注目を集めていた彼らが、間髪入れずに次期の日本テレビ系ドラマでも音楽を担当した形となる。
1970年代まで、ドラマやアニメーションの主題歌・BGM音楽は、それを専業とする、いわゆる「職業作曲家」がそのほとんどを手掛ける、いわば寡占市場に近い状態にあった。しかし、この時期の日本テレビの番組は、その慣習を次々と打ち破っていくような、大胆な音楽起用を見せていく。ドラマ『いろはの"い"』(1976)、『西遊記』(1978)ではゴダイゴが、アニメ『ルパン三世』(1977)、ドラマ『大追跡』(1978)では大野雄二が、アニメ『宝島』(1978)では羽田健太郎が、そしてアニメ『鉄人28号』(1980)では清水靖晃・笹路正徳らが参加する実験的バンド:マライアを抜擢。新進気鋭の才能を広く求め、テレビ音楽に次々と新風を吹き込んでいたのである。
そしてこれらの作家に共通しているのは、作曲のみならず、アレンジも、そしてバンドや楽器のプレイヤーとして演奏までも一貫して担うことができる、総合的なサウンドクリエイターであるという点だ。『俺たちは天使だ!』や『探偵物語』におけるSHŌGUNの役割も、まさしくそこが求められていたのであろう。これは、専業の作詞家・作曲家による「歌謡曲」が、80年代以降、プロデューサー×バンド体制による「J-POP」へと徐々に移行していくポップス界全体の変化と見事にリンクしているようには見えないだろうか。日本テレビのこうした試みは、その予兆を見事に嗅ぎ取り、「80年代の音」を求めて先手を打って動き始めた、一つの挑戦のようにも思えるのだが。
なお、SHŌGUNによる『探偵物語』のBGM音楽を収録したサントラ盤は、本放送当時には発売されなかったものの、1992~1993年にVAP「ミュージックファイルシリーズ」によって音源発掘・CD化されている。また現在ではiTunes Store他の配信サイトでも購入可能なので、ぜひともこの機会に映像と共に振り返って頂きたい。
工藤ちゃんを演じた松田優作も、当時のSHŌGUNメンバー:ケーシー・ランキンも、大谷和夫も、既にこの世を去った。しかし、70年代から80年代への“壁”をブチ破った『探偵物語 × SHŌGUN』の衝撃的な新しさは、いつまでも古びることはない。
写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
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