2015年10月03日
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2015年10月03日
森昌子、桜田淳子、山口百恵、伊藤咲子、片平なぎさ、岩崎宏美、新沼謙治、ピンク・レディー、石野真子、柏原芳恵、小泉今日子、中森明菜、岡田有希子……文字通り数々のスターを輩出した、日本テレビのオーディション番組『スター誕生!』は、1971年10月3日に第1回放送がスタートした。
この番組の最大の功績は、一般社会に広く歌謡界への門戸を開いたことにある。70年代の歌謡曲シーンは、原石をまっさらな魅力のまま世に送り出すというスタイルが支持されはじめ、旧来の芸能界的なシステムに準拠した、内弟子やボーヤのような徒弟制、ジャズ喫茶やナイトクラブでのセミプロ経験を経てのデビューは、時代の流れにそぐわなくなりつつあった。そこに『スター誕生!』が、昨日までの素人が明日のスターになれる可能性を提示したのである。これは、番組審査員の1人であり、番組の企画・構成にも関わった阿久悠の意向が大きく、そのことは阿久自身の回想録『夢を食った男たち』(文春文庫)に詳しく記されている。
葉書予選から幾度の予備審査を経て勝ち残った14組前後が、後楽園ホールのテレビ中継へと進む。1回の放送で7組が出場し、ここで作詞家、作曲家といった審査員のほか、一般の会場審査員も採点に加わる。素人の目で見た判断が審査に加点されているのだ。
こういった“視聴者参加型形式”は日本テレビが得意とするところで、過去にも勝ち抜きの『歌のグランプリショー』『歌のチャンピオン』がある。『シャボン玉ホリデー』など音楽番組に強い同局は、『ホイホイ・ミュージックスクール』『あなた出番です』『スターへばく進!』などのオーディション番組も制作していた。だが『スター誕生!』は勝ち抜き形式と違い、複数の合格者が出るときもあれば、1人も合格しない回もあり、リアルな厳しさがあった。合格者は決戦大会に進み、ここでレコード会社と芸能プロダクションのスカウトマンが獲得の意思を伝えるプラカードを揚げれば指名成立、晴れて歌手への道が拓ける。この形式は「人買い」と批難も受けたが、この生々しさ、下世話さも日本テレビの持ち味といえるだろう。
こういったシビアな審査の中和剤となったのが、司会をつとめた萩本欽一。合格者にも落選した者たちにも温かく接し、中盤のコント・コーナーで会場を和ませる欽ちゃんのキャラクターは、辛口な審査員との好バランスとなっていた。
デビュー第1号歌手の森昌子は、ノスタルジックな青春歌謡の復権ともいえる「せんせい」で登場。彼女のショート・カットは、本来ジャネット・リンに似せたつもりがタワシ頭などと呼ばれてしまったのだが、結果、あの髪型が醸し出す庶民的なムードによって、芸能界のスターが手の届きそうな位置まで降りてきたと人々に思わせたのである。
続いて桜田淳子が73年2月に「天使も夢みる」でデビュー。原石を発見し育てる、という番組の目指す方向に1つの回答を与えた逸材であった。逆に、同年5月に「としごろ」でデビューした山口百恵は、素朴な横須賀のいち少女で、その後7年間に渡るダイナミックな変貌は、当初は誰も予想していなかった。この3人による「花の中3トリオ」の成功は、従来の芸能プロやレコード会社主導の売出しから、テレビ主導のユニットへと変化が起きたことを物語っており、同時に歌謡曲というジャンルが、テレビ・メディアに大きく依存していたことを証明する形となった。
番組の開始早々、審査員の1人で、若く二枚目でアーバンな雰囲気を醸し出す作曲家が、テレビ視聴者の目に留まった。その名は都倉俊一。番組が始まってほどなく「都倉さんガンバレ」の横断幕まで登場したほどで、『スター誕生!』の第1号スターは、都倉俊一だったともいえそうだ。
『としごろ』写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
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