2016年04月07日
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2016年04月07日
今日4月7日は、1979年にテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の放送が開始された日だ。その後も様々な続編やスピンオフが作られ続け、2016年の現在でも新しい世代に向けた新しい作品が誕生しているガンダム・シリーズ。そのすべての源である最初の作品が誕生した日である。
富野喜幸(現:由悠季)が原作・総監督を務めたロボットアニメ作品としては、『無敵超人ザンボット3』(1977)、『無敵鋼人ダイターン3』(1978)に続く3作目となるが、この3作品に共通しているのが、渡辺岳夫・松山祐士の両氏が一貫して音楽を担当していたという点だ。作曲家:渡辺岳夫は、時代劇『大奥』(1968)、『子連れ狼』(1973)、スポ根アニメ『巨人の星』(1968)、『アタックNo.1』(1969)などの音楽で名を馳せてはいたものの、SFロボットものにはそれほどの経験がなかった。しかし富野は、渡辺の作り出した『アルプスの少女ハイジ』(1974)の音楽に惚れ込み、依頼を決めたという。ロボットのバトルアクションを中心とした当時のメカアニメの常道とは全く違う狙いを、富野が既に持っていたことがこの逸話からも透けて見えてくる。ロボットアニメの形を借りて、人間を描こうとした富野が、3作目にして遂にその意義を広く世間に知らしめた…… 『機動戦士ガンダム』とはそういう作品であり、また、音楽にもその証拠の欠片が残されているのである。
このような経緯もあり、また、渡辺のほうが既に劇伴音楽作曲家の大家として名が知られていたことから、ガンダムの音楽においても、渡辺がメインの作曲担当、あるいは「作曲:渡辺岳夫、編曲:松山祐士」という役割かのように思われがちだ。しかし実状は、キャラクターの心情を描写するような観念的なサウンドは渡辺、戦闘やアクションシーンなどで流れるいわゆるカッコいい曲は松山…… のように、それぞれが得意な曲調の作曲・編曲を一貫して担当する分担制であったという。実際、「機動戦士ガンダム」のBGM音楽全50曲のうち、渡辺が28曲、松山が22曲を担当と、ほぼ半々の受け持ちだったことが判明している。我われがよく知る「ファースト・ガンダム」の音楽とは、2つの才能によって紡ぎだされたものなのだ。
また、テレビシリーズ終了後には、劇場版3部作が相次いで公開。折からのガンダムのプラモデル(通称:ガンプラ)の大ブームも相まって、爆発的な人気を得ていく。劇場版でも、引き続き渡辺岳夫・松山祐士が音楽を担当したが、3作品それぞれに音楽設計に対する考え方が異なっている点が興味深い。劇場版第1作『機動戦士ガンダム』(1981年3月公開/松竹)では、既にファンにも耳馴染みのあるテレビシリーズ音楽のリメイクが行われ、使われる箇所もテレビに準拠した形で進められた。いわば、音楽的にも「テレビシリーズのリニューアル」が目指された形となる。しかし、第2作『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』(1981年7月公開/松竹)では様相が一変。ほぼ大半が新作音楽で固められ、アレンジャーとして当時まだ若手の久石譲が参加するなどの新風が吹きこまれる。音楽の付け方も、細かな編集によってリズム感を生み出したり、異なるシーンながら心情が共通する場面で同じ音楽が使用されたりと、「テレビから映画作品への脱却」を思わせる様々な試みが行われていた。そして第3作『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』(1982年3月公開/松竹)においては更なる進化を遂げ、出来上がったフィルムで音楽の使用シーンを秒単位で確認し、その上で作曲作業を行う、いわゆる「フィルム・スコアリング」と呼ばれる映画音楽作法が用いられた。制作スケジュールに余裕がなければ実現できないこの手法に敢えて挑戦し、映像と音楽とを同期させる表現の可能性を探ったのだ。ここに至り、ガンダムの音楽は遂に「映画音楽」として完成するのである。
現在、制作・公開が継続中の新作アニメ作品『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(2015~)は、この初代『機動戦士ガンダム』の前日譚を描くスピンオフ作品。音楽は服部隆之が担当しているが、作品を見ていると時折、実に懐かしい感慨に襲われる瞬間がある。そう、渡辺岳夫・松山祐士によって作り出されたあの「ファースト・ガンダム」の音楽が、当時の印象を壊さないように大事にリメイクされ、抜群の効果を上げているのだ。同じく、旧作のリブート作品として先んじて公開された、アニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』(2012~2014)においても、宮川泰が書いた『宇宙戦艦ヤマト』(1974)の音楽を、息子である作曲家:宮川彬良が見事に継承・リメイクしてファンの喝采を浴びたが、それと同じアプローチが、ガンダムにおいても試されているということになる。旧作で愛されていた数々の「劇中音楽」の上手な継承も、作品全体の評価や成否に大きく影響する大切なポイントの一つなのだ……と、こうしたリブート作品が増える傾向にある昨今、つくづく実感できるようになってきた。それも、単なる「再使用」ではなく、新しい時代のアイディアや感覚を上乗せした、「発展・進化」を思わせるものでなくてはならないはずだ。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』にも、そうした心意気をヒシヒシと感じるのである。
今はもうアニメにはさほど興味はない…… という貴兄でも、子どもの頃に見た『機動戦士ガンダム』の音楽が心の奥に沈んでいる方ならば、「音楽を受け継ぐ」ことの意義が『THE ORIGIN』から感じ取れるはずである。ぜひ一度、体験することをお薦めしたい。
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