2016年03月08日

アニメソングの「あした」を照らす光  堀江美都子…本日。3月8日は堀江美都子の誕生日

執筆者:不破了三

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子ども達を対象としたのど自慢番組として、1965年から69年までフジテレビ系で放送されていた『日清 ちびっこのどじまん』をご記憶だろうか。司会は大村崑。審査員にはカバゴン先生こと教育評論家の阿部進、ジャズクラリネット奏者の藤家虹二、淡谷のり子らが顔を揃え、野口五郎や研ナオコ、天童よしみなど、後に歌手デビューすることになる本格派たちも出場経験があるという、いわば「豆歌手」の登竜門のような番組だった。そして1966年、一人の少女がこの番組で準優勝し、それをきっかけとして3年後には若干11歳で歌手デビューを果たすことになる。当時の言葉でいう「テレビまんが主題歌」歌手の草分けであり、今なお「アニメソングの女王」と呼ばれる歌手:堀江美都子。今日、3月8日は彼女の誕生日である。


1969年、テレビアニメ『紅三四郎』の後期主題歌「紅三四郎」でレコードデビュー。以後、コロムビアレコード専属の学芸歌手として、テレビ主題歌や童謡などを歌い続け、テレビアニメ『ハクション大魔王』の「アクビ娘の歌」(1969年)、『けろっこデメタン』(1973年)、再放送版『サザエさん』主題歌「サザエさんのうた」(1975年)などを筆頭に、数えきれないほどの名主題歌を担当している。そして彼女の存在感を決定づけたのは、なんと言っても1977年のテレビアニメ『キャンディ・キャンディ』だろう。この主題歌の空前の大ヒット(120万枚超)により、子ども向けの小さな市場に過ぎなかったテレビまんが主題歌は、「アニメソング」という大きなマーケットとして一躍脚光を浴び、急成長していくことになる。堀江美都子は、創成期から飛躍期のアニメソング界を、盟友:水木一郎とともに牽引してきた、まさにレジェンド的存在なのである。


近年は主題歌を歌う機会こそ少ないものの、旺盛なライヴ活動などで健在ぶりを示している。2014年8月には、「アニサマ」の愛称で呼ばれる巨大アニソンライブイベント『Animelo Summer Live 2014』に登場。ももいろクローバーZらと共演しつつ、その圧倒的な歌唱力で、会場を埋め尽くした「今どき」のアニメファン達を立ちすくませた。またこの2月にも、スーパー戦隊シリーズ最新作(第40作目記念作)『動物戦隊ジュウオウジャー』主題歌に、スペシャルゲストとしてコーラス参加するというサプライズが話題となったばかり。レジェンドであると同時に、テレビまんが主題歌黄金期を知らない世代にとっても新たな驚きをもって迎えられる「永遠不変の現役感」、これこそ堀江美都子ならではのマジックである。


それを象徴するようなCD『堀江美都子 レア・グルーヴ・トラックス』が、2014年に発売されている。堀江美都子が1970年代のコロムビアレコードに残した無数の作品の中から、いわゆる「和モノDJユース」でも通用するような、グルーヴィー&メロウなタイトルばかりを厳選したコンピレーションであり、ライナーノーツにはDJ:MUROや、『和ジャズディスクガイド 1950s - 1980s』の共著者:尾川雄介などが巻頭言を寄せている。「レア・グルーヴ」と称して、ロック、ジャズ、R&B等の埋もれた名曲・名演・名盤を掘り起こし再評価していく、90年代より続く音楽の再生産活動。ついにその矛先が「テレビまんが主題歌」にも向けられる時代がやってきたのだ。そのテーマとして最初に選び取られたのが堀江美都子だったのは偶然ではないだろう。ここに収録された主題歌群を聴くと、堀江美都子の歌唱力はもちろんのこと、作詞・作曲・編曲・演奏の質の高さにあらためて驚かされるばかり。「子どもだまし」ではなく、「子どものものだから」こそ本気で取り組んでいたであろう、当時の制作者たちの鋭い閃きや苦心の積み重ねが胸に迫ってくる。作り上げてきたものの確かさがなければ、若い世代がこういう再評価をすることもないはず。「懐かしの歌」というフィルターを通してではなく、「知られざる質の高い音楽」としてテレビまんが時代の主題歌群を評価する世代の登場は、それを証明していると言えないだろうか。


80年代以降、アニメソングは大きな市場として成長していく半面、企画性やタイアップが優先されがちになり、アニメソング歌手の活躍の場も少なくなっていく。しかし時代は巡り、今また、活況を呈する数少ないポピュラーミュージック分野としてアニメソングが注目され、「アニソン歌手」が人気の職業として注目を浴びている。その今だからこそ、かつてのテレビまんが主題歌が確実に握っていたはずの「作品の主題を歌う歌」という本質を、もう一度見直すべき時期なのかもしれない。昔も今も、変わらぬ輝きを放ち続ける堀江美都子の歌声とは、アニメソング創成期から現在まで途切れることなく続いている一筋の灯台の光のように、その進むべき方向を照らしているように思えてならない。

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