2016年04月28日

平凡パンチ創刊と当時の音楽

執筆者:沢野ひとし

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大学2年の4月に「平凡パンチ」が創刊された。1964年(昭和39年)のことであった。丁度海外渡航が自由化になり、アメリカへの想いが熱くなりかけていた頃である。表紙の大橋歩のアイビースタイルのパステル画が実に新鮮であった。情報、ファッション、音楽、セクシーなグラビアに若者たちは新しい時代の幕開けを感じていた。秋には東京オリンピックの開幕と重なり、日本中が高度成長の真っただ中に突入していた。


私は高校時代からカントリー&ウェスタンに出会い、一人でウクレレやギターを自己流に楽しんでいた。休日になると都内のジャズ喫茶に向かい、ジミー時田とマウンテン・プレイボーイズ、原田実とワゴン・エースなどの演奏を熱い眼差しで見つめていた。


「大学に入ったら、ぜったいにカントリーバンドに入るのだ」学問はほったらかしにしてとり憑かれたようにバンドに入れ込んだ。ギターを触る人はたくさんいたので、競争相手の少ないスティールギターを選んだ。カントリーのスティールはハワイアン音楽とは違い、足で音を変える革新的なペダルスティールが日本のバンドでも取り入れはじめていた。アメリカのフェンダー社の楽器は40万円近くの高値でとても手が出せるものではなかったが、テスコ社から8弦の楽器が発売され、クレジット販売の百貨店である丸井から月賦で購入した。初歩的な技術は二年年上の先輩に教えてもらい、毎夜遅くまで楽器と懸命に取り組んでいた。カントリーの譜面は神田のカワセ楽器で手に入れた。


カワセ楽器にはマーティン、ギブソン、フェンダーといった高嶺の花の楽器がずらりと並んでいた。ここで発売されていた国産のマスターギターは学生たちの憧れでもあった。カントリー音楽関係の溜まり場で、プロの連中の話を盗み聞きしていた。


本場の歌手の来日によってさらに影響され、私の心はカントリー一色になっていった。ハンス・スノウ、ジミー・ディケンズ、ロイ・エイカフなどを近くで見ながら、レコードでは味わえない臨場感に酔いしれていた。


オリンピックの開催中に一日だが、原宿のオリンピック村のレストランで、昼と夜に我々のバンドが出演した。たどたどしい英語で歌手の男は司会をし、歌ったが、オリンピックに参加する選手たちは誰一人見向きもしなかった。しかし、アメリカから来た背の高いグループは、ビール瓶片手にハンク・ウィリアムズの「ヘイ・グッド・ルッキン」を一緒に声を合わせ歌ってくれた。


カントリーはつまるところカヴァー音楽であり、モノマネからは出ることは所詮出来なかった。学生バンドなら「良くコピー出来ましたね」と拍手はされるが、プロとなると、いくら日本語の詞をつけても、お客は納得しなかった。


やがてカントリーバンドにいた専属歌手がオリジナルの曲でヒットを飛ばしはじめた。守屋浩の「僕は泣いちっち」、城卓矢「骨まで愛して」がラジオから毎日のように流れはじめた。


海外で発表されたアルバムが日本でも店頭に並ぶのにそれほど時間がかからなかったが、相次ぐ本場のカントリー歌手の公演もやがて下火になり、入れ替わるように次の波、フォーク・ソング、エレキ・ブーム、GS・グループ・サウンズが押し寄せてきた。


それでも私はスティールギターの音色に愛着を持っており、カントリーバンドにこだわりを持っていた。ある日、プロのカントリーバンドを聴きに行くつもりで家を出たのだが、足を向けたのはグループ・サウンズの「スパイダース 」だった。リーダーの田辺昭知の元に集合したのは、井上孝之(現・堯之)のギター、大野克夫のスティールとキーボード、そして歌手に堺正章、井上順、かまやつひろしが狭いステージで動き回っていた。全曲オリジナルという謳い文句に悶えた。ロックとカントリーを合わせたような「フリフリ」に「モンキー・ダンス」のリズムに圧倒された。なによりも楽器を触っているプレイヤーが気分良く、ゴキゲンで演奏しているのが、ひしひしと伝わってくるのだ。演奏に合わせていつの間にかこちらも自然に体が動いていた。


スパイダースを見た夜は、布団に入っても壊れたテープのように繰り返し音が止まらなかった。1960年代はスパイダースに釘づけであった。とりわけ大野克夫の音のセンスは際立っていた。

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