2017年10月22日
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2017年10月22日
去る5月24日に3タイトルを発売し、日本の女性ポップス史を俯瞰する企画として幅広い層のファンの方の支持を頂いた、大人のMusic Calendar初協賛コンピレーションCD企画『コロムビア・ガールズ伝説』。好評に乗じて、再び日本コロムビア様から指令を受け、筆者監修のもと新たなコンピレーション2枚がシリーズの仲間入りを果たすことになりました。いずれも来る水曜日、10月25日に発売になります。
一枚は、65年から約四半世紀に渡った7インチ・アナログ・シングル盤の時代を総括する最初の3タイトルの流れを受け継ぎ、平成の夜明けから約10年、ヒットソングの主流メディアとなった「8cmCDシングル」全盛期にコロムビアを彩った若き乙女たちの息吹をまとめた『END OF THE CENTURY』です。
大人のMusic Calendarマガジンでは未だ対象外に見られがちな「短冊時代」ですが、掻い摘んで見ると様々な激動に見舞われています。CDの解説序文に箇条書きの形でまとめたものから抜粋してみましょう。
「おどるポンポコリン」を世に送ったビーイングのヒット・ファクトリーとしての地位確立。トレンディ・ドラマの大人気。あらゆるCMやTV番組と相乗効果を狙うタイアップ商法。カラオケボックス林立が招いたブームの再燃とユーザーの若年齢化。イケイケカルチャーの象徴となったディスコ「ジュリアナ東京」の隆盛。それに影響を受けたヒットメーカー・小室哲哉のダンス・ミュージックへの路線変更。さらにはTBS「平成名物TV」の1コーナー「いかすバンド天国」が火をつけたバンドブーム。アニメ産業の音楽メインストリームへの歩み寄りと、声優のアイドル化という新しい傾向のスタート。ジャンルとしてのヒップホップの一般化。新しいレコード会社が次々と設立され、既成のレコード会社も「分社化」へと至る傾向。ついでに、巨大ヒット路線との関係はほぼ皆無であるものの、「渋谷系」という新たな音楽概念の台頭。
そんなポストバブルに浮かれた時代、「歌うピンナップ」の役割を果たした7インチシングルから、トレンドを映し出す小さな鏡の如き8cmCDへの移行に対応させられた、トレンディドラマの美少女、時代に先んじすぎたガールズアイドルユニット、当時ならではのバブリーな演歌アイドル、牙を剥き始めたガールズロックバンド…そんな時代のエッセンスを一枚に凝縮しました。「えっあの人もコロムビアから歌を出していたの?」という新鮮な驚きを覚える人もいるかと思います。
21世紀の頭が見え始めた頃、沖縄の少女達に憧れダンスと歌に情熱を燃やしていた娘達も、今や一人残らず立派な大人。あの頃こそが、ノスタルジーを美化できる最後の時代になるかもしれません。今だからこそ組みたかったコンピレーションです。
そしてもう一枚は、アイドルという枠を飛び出し、60〜70年代の和製フォーク〜ニューミュージック黎明期に於いて奮闘した女性シンガーの軌跡をまとめた『FOLKY & ELEGANCE』です。過去、フォークに焦点を置いたコンピは様々に発売されていましたが、女性歌手のみに的を絞ったものとなると、ヤマハ/ポプコン関係の数枚を除くと全く前例がなく、そんな状況を打破するため、気合を入れて編纂に取り組ませていただきました。
現在、ライヴハウスシーンの主流と化し、世代を超えた支持を得ている、自作自演曲を弾き語る女性歌手達。そのスタイルは様々ですが、源流を辿ると1960年代、大学生を中心に栄えたフォーク運動にまで行き着きます。和製ポップスの夜明けに目覚めたレコード業界は、そんな学生フォークに注目し、和製ジョーン・バエズとして森山良子を67年にデビューさせますが、その後ザ・フォーク・クルセダーズの登場で革新的ムーヴメントに躍り出るフォーク・シーンの中で、女性アーティストも地味ながら注目を浴びる存在になっていきます。そんな中、コロムビアに新設された先鋭的ポップ・レーベル、デノンの初期リリースの一枚となった新谷のり子「フランシーヌの場合」は、反戦のメッセージを込めた切実な内容で大ヒットを記録。対照的に爽やかで若々しいハーモニーを生かしたハワイ出身の二人組ベッツイ&クリスの「白い色は恋人の色」も、後々までスタンダードとして愛される大ヒットとなります。
その2曲を最後と最初にそれぞれ配し、女性演奏者がフロントを務める異端GS、沢村和子とピーターパンや、早川義夫の未発表曲を初めてレコード化した女子大生3人組トライポッドなどの貴重なレコーディング、そして「プレ・ニューミュージック」とでも呼びたい、洗練された感覚あふれる大人のヴォーカル・ナンバーいくつかも交えつつ、ユーミンが先導したシンガーソングライター革命で曲がり角を迎え、「ニューミュージックお茶の間対応時代」となる78年に至るコロムビア・女性フォークの美味しいところをコンパクトにまとめてみました。
編者としては、この『FOLKY & ELEGANCE』のコンセプトがコロムビアを飛び出して、他社に残された革新的な名曲たちをも掘り起こしていくことを期待してやみません。
今回もジャケットのアートワークでは、前回一部で「ジャケ買い推奨」とまで賞賛を受けたキタサコクミコ氏の瑞々しいタッチが冴えまくります。『END OF THE CENTURY』はバブリーな時代感覚の中に、ちょっとした「悔しさ」のヒントも隠してみたり。『FOLKY & ELEGANCE』は敢えて時代感を曖昧にした光景から、理想的なギター少女の息吹が伝わってきそうです。
最後に、今回もまたディスクユニオンさんでは、先着購入者特典を用意して皆様をお待ちしております。『END OF THE CENTURY』は増田未亜さんの、『FOLKY & ELEGANCE』はやまがたすみこさんの、貴重なポートレイトをあしらったブロマイドです。次回のリコメンド記事では、この2作の聴きどころをシンプルにご紹介する予定ですので、お楽しみに。
『コロムビア・ガールズ伝説』 END OF THE CENTURY(COCP-40159)、FOLKY & ELEGANCE(COCP-40160)特典情報はこちら>
≪著者略歴≫
丸芽志悟 (まるめ・しご) : 丸芽志悟 (まるめ・しご) : 不毛な青春時代〜レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 10月25日に監修コンピレーションアルバム『コロムビア・ガールズ伝説』シーズン2(2タイトル)が発売される。
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