2016年08月03日

結成45周年となる「はちみつぱい」、伝説に新たに加わったフジロックでのステージ

執筆者:市川清師

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本日、8月3日は「はちみつの日」なのだそうだ。はちみつの日は、1985年、「日本養蜂はちみつ協会」と「全日本はちみつ協同組合」が、「8(はち)3(みつ)」という語呂合わせから、この日を記念日として制定したという。はちみつは、日本では平安時代に宮中への献上品に使われるほど、貴重品とされていた。アカシアやレンゲ、オレンジやクローバーなどの花畑を元気に飛び交う蜂たちがもたらしてくれる自然の恵みである。


そんなはちみつの日に相応しく(!?)、はちみつぱいについて書く。多少のこじ付け臭さは、「大人のMusic Calender」らしいと、お笑いあれ。


ムーンライダーズの前身バンドであるはちみつぱいは、かのはっぴいえんどとともに「日本語のロック」を作ったバンドと言われている。多くの方が認識している通り、“伝説のバンド”である。1973年10月にリリースした彼らの唯一のオリジナル・アルバム『センチメンタル通り』は誰もが知る歴史的名盤。このくらいは日本のロックの歴史の基礎中の基礎、日本のロック史を学ぶ際には必修科目だろう。


その伝説のバンドが「結成45周年記念」ということで、再結成したばかりか、ここにきて精力的に活動している。鈴木慶一(vo、g)、岡田徹(key)、武川雅寛(vln、tp)、駒沢裕城(g) 、本多信介(g) 、和田博己(b)、渡辺勝(g、key)というオリジナル・メンバーに、かしぶち哲郎の遺児・橿渕太久磨(ds)と ムーンライダーズのサポートをしている夏秋文尚(ds)を加え、はちみつぱいとして、数多のライブをこなしているのだ。


契機は昨年、2015年12月20日(日)に東京・芝公園 メルパルクホールで行われた「鈴木慶一ミュージシャン生活45周年記念ライブ」での復活だが、同イベントをただの“ラストワルツ”や“ワンナイト・スタンド”にせず、はちみつぱいとしての活動を活性化。1988年6月には東京・汐留のPITで1日限りの再結成コンサートを開催しているから、28年ぶりの復活である(この時の音源は『9th June 1988』としてリリースされた)。


本年、2016年5月9日にビルボード大阪、5月15日にビルボード東京で「45周年記念ライブ」を行っている。同公演を収録した実況録音盤『Re:Again Billboard Sessions 2016』も7月20日にリリースされた。同日には『復刊 ロック画報 はちみつぱい特集』も発売されている。ファンは必読だろう。さらに東京・南青山のギャラリー「ビリケン商会」ではベテランから若手まで、クリエイターが各々の“センチメンタル通り”をイラストなどで表現した「はちみつぱいトリビュート展 私のセンチメンタル通り」が開催されている。


そのはちみつぱいの伝説に新たに加わったのが、この7月24日(日)、新潟県・苗場スキー場で行われた「FUJI ROCK FESTIVAL 2016(フジロック・フェスティバル2016)」(フェスそのものは7月22日から24日までの3日間開催)の“フィールド・オブ・ヘヴン”でのステージだろう。


鈴木自ら“45年かけて、ようやくここへ辿り着いた”という。“中津川フォークジャンボリー”や“春一番”など、日本のロック、フォーク史に残る伝説の野外フェスティバルに続き、「フジロック」開始から20年目という記念すべき年に結成45周年のはちみつぱいが出演。それも“フィールド・オブ・ヘヴン”である。


某ウィキペディアによると、同所は“国籍も世代も超えたヒッピーな雰囲気で溢れ、多彩な音楽とピースフルなムードから最も「フジらしい」エリアとも呼ばれる”という。


ある意味、はちみつぱいにもっとも相応しい場所ではないだろうか。実は、筆者は2014年の同フェスの“フィールド・オブ・ヘヴン”で、鈴木慶一に会っている。彼自身は、当時結成したばかりの新バンド、Controversial Sparkで、“ジプシー・アヴァロン”に出演していたのだが、観客(フジロッカー)としてもフジロックを楽しんでいた。


同所ではMoe(モー).やフィル・レッシュ・アンド・ザ・テラピン・ファミリー・バンドフィル・レッシュのライブが行われていたのだ。鈴木が絶賛していたMoe.は25年以上、活動を続けるアメリカを代表するジャム・バンド、そして、フィル・レッシュは、かのグレイトフル・デッドの結成時からのオリジナル・メンバーである。


まさに“辿り着いた約束に地”である“フィールド・オブ・ヘヴン”。サウンドチェックではいきなりグレイトフル・デッドの「ダークスター」を演奏。そして、そのまま「こうもりが飛ぶ頃」へ。同曲は20分近い、インプロビゼーションの応酬によるサイケデリックな名曲へと生まれ変わっているのだ。


約1時間、サイケデリックな幻影を見せつつ、アメリカ・ルーツ・ミュージックを辿り、濃厚な愛と街を歌い、奏でるはちみつぱいの世界を濃縮還元しつつ、現在進行形のはちみつぱいを聴かせる。デッドやPOCOなど、サイケデリック・ロックやカントリー・ロックの影響を45年かけて消化し、昇華させ、2016年に炎天下の会場に集まった観客を世代、性別、嗜好を超え、魅了。彼らを虜にしていた。はちみちぱい熱中症患者へと変える。実際、SNSなどでは、その感動をつぶやくものも多かった。

Fujirock Express2016>FILD OF HEAVEN 7/24 SUN はちみつぱい>


「フジロック」の“フィールド・オブ・ヘヴン”で、その復活に終止符を打つかと思ったら、9月3日(土)には、はちみつぱいを敬愛するアメリカ・シカゴ出身・日本在住の異色の音楽家・ジム・オルーク(作曲家、プロデューサー、エンジニア、マルチ奏者。ソニック・ユースで活躍、Wilcoをプロデュースなど)との“2マン・ライブ”が決定した。ジムはこの日のために新バンド「ジム・オルークと命拾い」として出演する。石橋英子、須藤俊明、山本達久、波多野敦子ら、昨年リリースされた13年ぶりのボーカル・アルバムである新作『Simple Songs』をともに作った手練ミュージシャンたちとの鉄壁のバンドサウンドを披露する。はちみつぱいは彼を煽るか、彼に煽られるのか、さらに進化した未来形のはちみつぱいが聞けるはずだ。


付け加えるならば、同時進行で、鈴木慶一はもう一つの伝説、ムーンライダーズも“40周年記念”として、始動させる。10月からライブハウス・ツアー『ムーンライダーズのFinal Banquet  Moon Riders Outro Clubbing Tour』を行う。デビュー40周年を迎えたムーンライダーズが“感謝を込めて期間限定の「活動休止の休止」を決定!”したのである。


そのツアーのスタートとして、8月28日(偶然にも鈴木慶一の誕生日)に東京・夢の島公園陸上競技場(東京オリンピックの影響で、同会場での開催は今年最後となる)で開催される『WORLD HAPPINESS 2016』にムーンライダーズの出演が決定している(9月18日にはアーバンギャルド主催の「鬱フェス」へも出演)。


はちみつぱいが「フジロック」に、ムーンライダーズが「WORLD HAPPINESS」へ、偶然だが、地方型の野外イベント、都市型の野外イベントの“双璧”に出演するのが各々のバンドの色合いを考えると、必然のような気もする。


いつまでもあると思うな、親と金ではないが、鈴木慶一をして“天国がリアル”な年頃、時間がない、集まれるときには集まる、行ける時には行くではないだろうか。伝説を自ら更新していくさまが清々しくもある。もちろん、晩節を汚すとは無縁である。前衛であり続ける。こんな“ロッカー”、そうはいない。


◆はちみつぱいトリビュート展 私のセンチメンタル通り

日時:2016年7月16日(土)~8月7日(日)

会場:ビリケン商会:03-3400-2214

営業時間 12:00~19:00 (毎週月曜日定休)


◆WWW X Opening Series はちみつぱいとジム・オルーク

日時:2016年9月3日(土)

会場:東京・渋谷WWW X

出演:はちみつぱい / ジム・オルークと命拾い

時間:開場17:00 開演18:00


WORLD HAPPINESS2016

日時:2016年8月28日(日)

開場11:00  開演12:30

会場:夢の島公園陸上競技場


アーバンギャルド Presents 鬱フェス2016

日時:2016年9月18日(日)

開場13:30 開演14:00 終演予定21:00

会場:東京・渋谷TSUTAYA O-EAST


◆Moonriders Outro Clubbing Tour

チケット一般発売:8月6日(土)(金沢公演のみ7月28日(木))

料金:6000円(消費税込)(全会場共通 ※金沢公演は除く)

※詳細情報は、それぞれ主催者ホームページでご確認ください。

Re:Again Billboard Sessions 2016 はちみつぱい

復刊 ロック画報 はちみつぱい特集 (ele-king books) 単行本(ソフトカバー)

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