2016年01月13日
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2016年01月13日
キャンディーズのメイン・ヴォーカルがスーこと田中好子からランこと伊藤蘭にスイッチしたのは、75年2月21日発売のシングル5作目「年下の男の子」からであることはよく知られている。デビュー当初はそのグループ名のとおり「食べたいくらい可愛い女の子」、つまり妹キャラ的な売り方をしていたキャンディーズだが、当時のマネージャーだった諸岡義明が、ランだけファンからの見られ方が異なっていることに気づき、彼女のお姉さんキャラをイメージして作られた「年下の男の子」で、ランをセンターに配したことで人気がブレイクしたのであった。
デビュー当時から歌唱力が高く、柔らかみのあるメゾ・ソプラノでリードをつとめていたスーや、絶対音感の持ち主で、グループの音楽的リーダーだったミキに比べると、ランのヴォーカルはやや個性が弱い印象もあったが、「年下の男の子」でみせたコケティッシュな歌唱法で、彼女独自の魅力が開花した。例えば「真っ赤なリンゴを」を「まぁあっかな~」、「可愛い」を「かんわいいっ」とアクセントをつけて歌い、語尾をクルッとひっくり返すキュートな歌い方は、ソロ・パートが長い「年下の男の子」で効果的に響いた。ランが、スーともミキとも違う独自のヴォーカル・スタイルを身に着けたことで、キャンディーズの楽曲に広がりが出たのである。メンバー3人の個性がいよいよ明確になったからこそ、「春一番」のように全員がほぼユニゾンで歌うナンバーでは3つの個性のぶつかりあいと溶け込み方により、圧倒的なパワーとスピード感を得ることになった。
ランのコケティッシュなヴォーカルの極め付けは「暑中お見舞い申し上げます」の「ウウッウーン」や「飛べそうでぇえーす」の発声。ユニゾンとコーラスの合間に入るランのキューティ・ヴォイスは、ここ一番で効果的な魅力を発揮するのである。
ラン自身は、歌手デビュー直前に日大芸術学部演劇学科に進んだこともあり、演技方面への指向が早くからあったようだ。彼女たちが全作詞、MMPとの共同作曲を手がけたラスト・アルバム『早春譜』を聴くと、3人の個性がよくわかるが、ことにランの作った「アンティック・ドール」は、人形の心で歌うという発想や物語的な詞の構成力など、キャンディーズの諸作ではあまりこういう発想の楽曲がなかっただけに新鮮だった。そして、ファイナル・カーニバルのラスト・ナンバーとなった「つばさ」もランの作詞だが、恋の思い出とそこからの旅立ちを、自分たちとファンの関係に例えており、詞作の鋭さはメンバー随一だったといえるだろう。
解散後、しばしの休業期間を経て、80年に大森一樹監督の『ヒポクラテスたち』で医学生を演じ、女優として復帰した。続けて野田秀樹率いる夢の遊眠社の舞台『少年狩り』に主演と、アンダーグラウンドな作品に立て続けに出演したあたり、解散前後から彼女が目指していた方向性がわかるような気がする。以後は女優として安定した活躍ぶりをみせていることはご存知の通り。
キャンディーズ解散後、ともにソロ歌手としてレコードをリリースしたスー、ミキに比べ、ランは遂にソロ・シンガーとしては復帰しなかった。そのチャーミングな歌声は、「ハイリキLight&Mild」のCMや、太田裕美や石川ひとみなどかつてのナベプロ女性歌手陣が集合した、東日本題震災復興支援チャリティーソング「ひとりじゃないの」でチラッと披露してくれる程度であったが、愛娘で女優の趣里が、昨年公開された主演映画『東京の日』の劇中で歌った「なごり雪」が、往年のランちゃんのヴォーカルを思わせるものであったことを追記しておこう。
写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
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