2016年04月04日
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2016年04月04日
昨年ついに(ほぼ)完全収録のDVDがリリースされ、今からでもその全貌を把握することが容易になったキャンディーズの伝説的な解散コンサート、ファイナルカーニバルは、1978年の今日、4月4日に後楽園球場で行なわれた。
そのコンサート直後に、『<週刊少年マガジン緊急増刊>キャンディーズ ファイナルカーニバル』という一冊の本が発売された。その中では実際の時間経過に合わせて当日の写真が構成され、表紙と裏表紙の裏側にはそれぞれ始まりと終わりの時刻が大きく印刷されていた。17時17分と21時17分。つまりこのコンサートは4時間にもわたって行なわれたものだったのだ。
そこで披露されたのは全52曲、バックバンドのMMP(+HORN SPECTRUM)だけの演奏曲を除いてもキャンディーズは寒空の中、実に48曲を歌ってのけたのである。
これだけでもコンサートとしては破格のスケールだと言えるだろう。これは同時代の欧米のバンドと比べても見劣りしない。同日に近くの武道館で行なわれた当時のスーパーグループ、フォリナーの初来日公演で披露されたのは12曲、時間も約1時間半だったという。長さの点でも伝説となっているレッド・ツェッペリンの1971年の大阪公演ですら3時間20~30分と言われる。単独アーティストによるのもので休息なしで4時間にわたるコンサートというのは今でもほとんど聞いたことがない。しかも日本では当時珍しかった野球場での公演であり、フィールドまで開放し5万5千人の観客を集めたというのも異例だった。
プロ野球のスケジュールの合間を縫って設営されたステージの完成も直前で、そこでのリハーサルの時間も当日正午からの約3時間しかとれていない。それで長い花道移動もあり衣装替えは複数回ありのステージを最後までやり終えた彼女たちの凄さについて、解散に向かってのドラマ最終章としての評価とは別にきちんと評価すべきなのかもしれない。
音楽的成果も見逃せない。つま恋で1週間にわたる合宿まで行なって練習を積み、3月18日から全国8か所での「ありがとうカーニバル」公演で固めてきた、アース・ウィンド&ファイアやボズ・スキャッグスの最新曲も含む前半の洋楽カヴァー・パートでは、英語の発音に若干の怪しさは残ったもののアイドルの新しい形を見せてくれた。インスト・パートでMMPが密かに聴かせたキング・クリムゾンの「エピタフ」には、彼らがかつてあいざき進也と共に「クリムゾン・キングの宮殿」(歌詞は日本語!)にチャレンジした時の経験も反映されていたはずだ。彼らにとってもこのステージは集大成だったのだ。
ツアーをくり返す中でスタジオ録音版の完璧とも言えるアレンジを敢えて崩し、練り直された彼女たちの代表曲の演奏にも興味深いものが多かった。「わな」で奏でられる「ホテル・カリフォルニア」風のレゲエ・カッティング・ギター、「やさしい悪魔」の転調部分を強調するベース・ランニング、そして「春一番」で球場内を“浮遊”するアナログ・シンセのレトロなトーンは、解散コンサートに漂っていた切なさに満ちているようにも聞こえる。そんな演奏をバックに3人は終盤、悲鳴に近い声を上げながら歌い、叫び続けるのだ。
実はこの長いコンサートでもただ一曲だけ歌われなかった彼女たちのシングル曲がある。それが10枚目の「夏が来た」で、本来は「やさしい悪魔」と「暑中お見舞い申し上げます」の間で披露される予定だったにも関わらず、時間が押していたことを危惧する警察との交渉でカットせざるを得なくなってしまったと言われている。そしてこの年、それまで数年間、日本中の青年たちを明るく照らしてくれていた“キャンディーズの夏”はやって来なかった。
写真:キャンディーズ ファイナル・カーニバル in 赤坂BLITZ!
撮影協力:ソニー・ミュージックダイレクト
ソニーミュージックOTONANO『キャンディーズ メモリーズ FOR FREEDOM』スペシャルページはこちら>
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