2015年12月05日

1977年の今日、キャンディーズの「わな」がリリース。ミキが初めてセンターを務める

執筆者:寺田正典

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キャンディーズのシングル曲の中で音楽的に最も高度な一曲ではないかとも言われる「わな」は、1977年の今日、12月5日にリリースされた。


衝撃の解散宣言(7月17日)から約5カ月後、ファンも彼女たちも翌年の解散コンサートに向け異常な心理状態に入りつつあった時期に発売された16枚目のシングルであり、それまでシングルでは“センター”を務めたことがなかったミキがラン、スーの後押しもあって初めて真ん中に立ち、メイン・ヴォーカルを任されることになったエピソードで知られる一曲だ。


作曲は「年下の男の子」「春一番」といったキャンディーズの代表曲を手がけた穂口雄右が久々に担当。時期的にも彼女たちの最終シングルではないことはわかっていたが、穂口自身は自分がキャンディーズに書く最後の曲になるかもしれないと考え、そのつもりで臨んだ仕事だったという。


当時のCBS・ソニーの担当プロデューサー、酒井政利からはこう依頼されたとか。「キャンディーズは最近とっても綺麗になりました。キャンディーズがもっと綺麗に見える作品をお願いします」。そこには「食べてしまいたいくらい可愛い」からという理由でキャンディーズという名前をもらった3人が大人の女性としての美しさを身につけつつあり、それをさらに引き立てるような楽曲を!という含意があったのだろう。その言葉に「創作意欲を書き立てられた」と語る穂口は、音楽的にも「大人」の曲をと考えたようだ。勿論、久しぶりに組んだ彼女たちは、それを充分こなせるだけの実力を身につけていた。

そうして作られた曲「わな」は、右チャンネルで躍動する斎藤ノブ(現在は斉藤ノヴ)のコンガの響きからも明らかなようにラテン的ニュアンスの強い曲調。編曲も担当した穂口が指名した優秀なスタジオ・ミュージシャンたちのスケジュールをまとめて押さえるのはかなり困難だったという。しかも、せっかく押さえた時間に、交通渋滞のためドラマーの林立夫が遅刻を余儀なくされるという事態が発生。やむなく選択された方法が「ドラムレスでのリズム録り」で、1時間半遅れでスタジオに到着した林立夫はそこへのドラムスのオーヴァーダビングを1テイクで成功させたという。出来上がったリズム・トラックは独特の緊張感が溢れるものに仕上がったが、それを可能にした林立夫の高いスキルの中に、キャラメルママ~ティン・パン・アレーのドラマーとして細野晴臣や大滝詠一との活動の中で鍛え上げられてきたニューオーリンズ・スタイルをも含む高度な技の蓄積をぼくは見る。


そんなミュージシャンたちの技術に応えた歌唱を聴かせるには、シングルのB面やアルバムの中で「ソフィスティケイテッド・キャンディーズ」とでも呼びたいような洗練された楽曲に次々とチャレンジしてきたミキをメインにした編成で挑むのは最良の選択だった(実際、穂口も作曲に際しては「ミキが歌っている姿」をイメージしていたと後に語っている)。


歌詞も鮮烈な印象を残す。紅茶を入れるとかタマネギをむく、といった具体的過ぎるほど具体的な描写を含んでいながら仄めかし表現も多く、曲全体としては非常に難解なのだ。男と女の別れの歌らしいということはわかるにしてもその先の状況は特定しにくい。聴けば聴くほど、この具体表現と暗喩連発の間に仕掛けられた「わな」にかかってしまう。彼女たちの次の最終シングル「微笑がえし」のタイトルにつながるフレーズまで出てきており、今からだと「微笑がえし」の歌詞構造まで先取りしていたようにさえ見えるのだから恐ろしい。


『わな』写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト 
キャンディーズ

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