2016年07月29日

1967年暮、オールナイトニッポンで初めて聴いた「帰って来たヨッパライ」

執筆者:森川欣信

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フォーク・クルセダーズ「帰って来たヨッパライ」を初めて聴いたのはオールナイトニッポンだった。

この番組はパック・イン・ミュージック(TBSラジオ)とともに深夜放送の草分け的な番組で中高生の間では絶大な支持を得ていた。

まだテレビ番組の深夜帯が無く、午前零時を回ればほとんどの学生達はラジオの深夜放送にそのチャンネルを合わせていた。

1967年暮、中学3年の冬に僕はこの曲に出逢った。

ラジオからこの曲が流れ出した時、ふざけた曲だなと思った。


ボーカルがテープの早回しである事は明らかである。

当時、オープンリールのテープレコーダーを持っているものなら、誰もが一度くらいはテープ速度を変えてこの手の遊びに興じていた。

当然の事、こんな遊びをまともに音楽に取り入れようなどとは誰も思いつかなかった。

しかし、よく考えてみればビートルズは既にこの方法でレコーディングを行っていた。

例えば「A Hard Day's Night」の間奏の12弦ギター。「In My Life」のジョージ・マーチンのピアノ。

しかし,ビートルズほど真剣に楽曲制作に向き合ってのテープ操作では無い。

なんかどこか人を食ったようなコミカルな感じがして、この曲がさほど音楽的であるとは思わなかった。

だいいちサビの歌詞が「天国良いとこ 一度はおいで」、草津節のパロディーである。


ところが、曲が進むにつれ、関西弁のこれまたとぼけた台詞のバックに流れるギター・リフがオフェンバックの「天国と地獄」の馴染みのフレーズとわかって妙に感心した。

で、次に僕がギョッとしたのは間奏のピアノである。

僕は耳を疑った。それはビートルズの「Good Day Sunshine」である!

「こいつらおかしなヤツだな!?」

曲の途中で突然、僕はこの曲というか作り手(つまりアーティスト=フォーク・クルセダーズ)に関して印象が変わった。

ラジオのボリュームを思わず上げて聴き入ってしまった。

そして、これまたナンセンスこの上ない(勿論良い意味で)エンディング、読経の歌詞が後半「it's been a hard day's night~」になり、唐突に意味も無くベートーヴェンの「エリーゼのために」のピアノが流れこの曲はフェィド・アウトする。


このコミックソング(作り手)はただモノじゃないと思った。

まず、どこまでも人を食っている感じがどこかビートルズの映画「ビートルズがやって来る ヤア!ヤア!ヤア!」、あるいはライナーノーツや雑誌等に書かれている記者会見でのビートルズのパーソナリティーなんかと被った。

  そしてこの曲の自由奔放な遊び感はビートルズの最新作、「SGT.Pepper's」や「Yellow Submarine」、そしてエンディングのカオス感は半年前にリリースされた「All You Need Is Love」のcodaを思わせた。


「帰って来たヨッパライ」は京都の学生バンドが自主制作したアルバムに収録されていて関西方面ではすでに大きな話題となっている」、DJの亀渕昭信は興奮して語った。

 その次の日、この「帰って来たヨッパライ」のオンエアを僕はラジオの前で心待ちにしていた。当時、同様な夜を過ごしていた中高生はたくさんいただろう。深夜放送はこうして音楽とともに広がって行った。

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