2019年03月25日
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2019年03月25日
42年前の今日、1977年3月25日にMARI & RED STRIPES(マリ・アンド・レッドストライプス)名義のシングル「思い出の渦」、アルバム『MARI & RED STRIPS』で、ポップ・マエストロ、杉真理がビクター音楽産業からデビューした。杉は齢65となったが、楽隠居など、どこ吹く風、ポップスの最前線で元気に活動を続けている。先月、2月27日には少しずれこんだが、デビュー40周年を記念するアニバーサリー・アルバム『MUSIC LIFE』が出たばかり。その“音楽人生”の始まりが、MARI&RED STRIPSだったのだ。
杉自身、当時はアーティストとして65歳まで現役で活動していることなど、想像できなかったという。今回の記事のため、杉が当時を振り返り、コメントを出してくれた(以下、「」内は杉のコメント)。
「デビュー1年後に大病(急性髄膜炎)をして数ヶ月間の音楽活動休止を余儀なくされた以降は、一度も休むことなくライブ活動、作曲、ラジオ番組などの活動を40年間続けられている事に驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。僕がデビューした頃は40年も現役で音楽活動している人などほとんど居ませんでしたし、僕自身も『そのうち曲など出来なくなるだろうし、声だって出なくなるだろうし、ゆくゆくは裏方(制作サイド)に回って安定の人生を目指すもの』と思っていました。いつしか『安定の人生』というテーマを捨て去ってから、音楽も人生もより楽しい物になっていました。安全な範囲から時には逸脱しないと冒険は出来ない事を学んだ40年でした」
RED STRIPESは、翌78年2月25日に杉真理&レッド・ストライプス名義でアルバム『SWINGY』をリリースし、前述通り、大病によって活動休止となってしまう。RED STRIPESのレコーディングには、杉真理を始め、青山純(Dr)、新井田耕造(Dr)、竹内まりや(Back Vocal)、安部恭弘(Back Vocal)、平井夏美(Back Vocal)、永田一郎<エルトン永田>(Kb)……などが参加。RED STRIPESは、元々は慶應大学の音楽サークル「リアル・マッコイズ」を母体に結成されたピープルが前身だが、杉によると「当時のアマチュア・バンド、ピープル活動中に出会ったミュージシャンが母体でしたが、もはやピープルのメンバーだったのは竹内まりやくらいで、その他はコンテストや人のツテで知り合った『杉くんを手伝ってやろう』という雑多なミュージシャンの集合体でした」だそうだ。いまでこそ、錚々たる顔ぶれだが、当時は無名の、限りなくアマチュアに近い存在。レコード会社の上層部は経費対効果を考え、スタジオ・ミュージシャンを起用するように指示を出したが、A&Rとして、制作現場の陣頭指揮をとっていた平井夏美こと、川原伸司(当時はビクターの社員だったため、アーティストとして関わる際には平井夏美と名乗っていた!)はそれを頑なに固辞している。彼は学生たちが集まって、何かを作り上げる、そんな瞬間をドキュメントしたいと思っていたそうだ。ちなみにデビューが杉真理名義ではなく、MARI&RED STRIPES、杉真理&RED STRIPESなのは、竹内まりや&RED STRIPES、安部恭弘&RED STRIPES……と、続けてリリースする構想があったからだという。
RED STRIPESはどんな音楽を目指していたのだろうか。杉は「一言で言えばPOPSでしたが、当時POPとは『コマーシャリズムに流された』とか、『軽薄な』とかの悪い意味で使われていたので、説明する言葉が見つかりませんでした。(今は今で同じですが、笑)思い返せばSteely Danのような演奏者一人一人の個性、技が色濃く出た集合体と、それとは正反対のWingsのようなコーラスが際立つバンド、両方の良いとこ取りを目指していたんだろうと思います。未だにそんなバンド居ませんが……」と、述懐する。
また、「青い、未熟、勢い任せ…等々、反省する反面、『勢いだけでよくここまでやれたな』と感心するところもあります。また、僕の今も目指しているアルバム・スタイルの原型がすでに内在している気もします。後に名を残す事になる(当時はアマチュアに毛が生えたような)ミュージシャン達の演奏、コーラス(竹内まりや、安部恭弘)は素晴らしい!『未熟だったのは俺だけじゃん』と最近気づかされました」とも言う。
残念ながらREDSTRIPESは活動休止。杉は1980年、CBSソニーに移籍し、6月21日にシングル「Hold on」、7月21日にアルバム『SONGWRITER』をリリースしている。ソロ・アーティストとして、再デビューしたが、このRED STRIPESの“赤い絆”は継続していく。“一度組んだバンドは死ぬまで解散しない”というのが杉の基本ポリシー。2008年1月にリリースしたアルバム『魔法の領域』に収録される「僕らの日々」では青山純(Dr)、安部恭弘(Piano,、Back Vocal)、竹内まりや(Back Vocal)、平井夏美(Back Vocal)が参加。作詞は竹内まりや、作曲は杉真理&平井夏美、編曲は杉真理&レッド・ストライプスと、RED STRIPESの名前が久々にクレジット表記された。安部とは2014年11月にリリースされた杉真理with Friends名義のアルバム『THIS IS POP』で、杉真理&安部恭弘として「音楽の女神」を共作、共演している。
竹内とは彼女のソロ・デビュー以降、度々、共演、共作しているが、杉の最新作『MUSIC LIFE』に収録された「Dear Angie~あなたは負けない」にも彼女は参加している。同曲は元々、2012年に杉が竹内まりやのために“東北の方達を想って”書き下ろした曲だが、今回はセルフカバーに竹内がコーラスとして参加している。杉は竹内とは「『寅さんとさくら』のようなダメ兄と良くできた妹のような関係がず~っと続いていて、お互いず~っと音楽をやれているのは奇跡だね、といつも話し合っています」と言う。
そんな所以や縁のある杉の最新作。80年代に数多く共演した鈴木茂(G)、岡沢章(B)、島村英二(Dr)、中西康晴(Kb)という“Just 4 Rhythm”を始め、現在、ライブなどをバックアップする藤田哲也(B)、杉未来(Dr。彼は杉真理の実子!)、小泉信彦(Kb)、細井豊(Kb)なども参加、また、今は亡き村田和人に捧げるナンバーが収録されるなど、いろんな意味での集大成的作品で、杉の音楽的な蓄積や交流が奇をてらうことなく表出された作品ではないだろうか。
「僕の基本的な考えは『曲が全て』、どんな名演奏、名歌唱であろうとも曲が良くなければ意味がないと考えています。新作『MUSIC LIFE 』は僕の最高値を刻み込んだ作品で、デビュー当時、夢みていた『演奏者一人一人の個性、技が色濃く出た集合体と、それとは正反対のコーラスが際立つバンド・サウンド、両方の良いとこ取り』にかなり近づいた作品かもです」
デビューから42年、会心の作をものにした杉真理。彼は「相変わらず、行けるところまで行ってみよう、やってみようと思っています」と、その活動のスピードを緩めない。5月には「杉真理ライブ2019『MUSIC LIFE』」が控えている。あと3年もすれば、デビュー45周年も近づいてくる。杉真理の“POPS”を巡る“冒険”に終わりはない。
「Masamichi Sugi40thAnniversarySpecial Site」>
オネスト・アイ presents 杉真理ライブ2019 「MUSIC LIFE」>
≪著者略歴≫
市川清師(いちかわ・きよし):『MUSIC STEADY』元編集長。日本のロック・ポップスに30年以上関わる。同編集長を退任後は、音楽のみならず、社会、政治、芸能、風俗、グラビアなど、幅広く活躍。共著、編集に音楽系では『日本ロック大系』(白夜書房)、『エンゼル・ウィズ・スカーフェイス 森山達也 from THE MODS』(JICC)、『MOSTLY MOTOHARU』(ストレンジデイズ)、『風のようにうたが流れていた 小田和正私的音楽史』(宝島社)、『佐野元春 SOUND&VISION 1980-2010』(ユーキャン)など。近年、ブログ「Let's Go Steady――Jポップス黄金時代 !」で、『MUSIC STEADY』を再現している。
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