2019年03月24日

[recommend]南こうせつデビュー50周年記念出版『いつも歌があった』

執筆者:前田祥丈

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2019年2月13日、南こうせつが70歳の誕生日を迎えた日、デビュー50周年を記念するベストアルバム『南こうせつの50曲』とともにオリジナルフルアルバム『いつも歌があった』がリリースされた。今の南こうせつの想いが託されている10曲には、かぐや姫としてデビューして以来の、フォークシンガーとしての彼の姿勢が示されている。



このアルバムリリースから10日後、同じ『いつも歌があった』というタイトルのエッセイ集が発行された。古希を目前にした南こうせつが、自分の音楽人生を振り返り、ここから先への想いを語ったものだ。南こうせつが「神田川」の人であることに間違いはないけれど、彼が「神田川」だけの人ではないということを、この本は教えてくれる。


例えば、70年代に南こうせつはラジオの深夜放送パーソナリティを担当していた。彼の番組は、当時あまり脚光を浴びていなかったアーティストの曲を、ジャンルを問わず積極的に流していた。彼らにとって、南こうせつの番組は曲を流してもらえる可能性がある数少ないメディアだった。南こうせつは、番組で流す候補曲をすべて自分で聴き、良いと思った曲をかけていたという。その理由は、ラジオから流れる音楽に夢中だったかつての自分と同じようなリスナーに向けてのメッセージとして番組をつくっていたからだった。


南こうせつは持続の人でもある。1981年から10年間続けられ、九州を代表する野外フェスとなった「サマーピクニック」もそのひとつ。その後も1999年(福岡)、2009年(つま恋)、2014年(大阪)と開催され、2019年9月にも福岡で開催される。さらに、チャリティコンサートとして大きな実績をあげた「広島平和祈念コンサート」も1986年から10年間続けられ、それ以降も彼は毎年広島を訪れて歌い続けている。


そんな南こうせつのアーティストとしての姿勢は、「神田川」という時代を超える名曲のおかげで、逆に見えにくくなっているのではないかとも思う。『いつも歌があった』は、南こうせつがシンガー・ソングライターとしてだけでなく、日本の音楽シーンで果たした役割、そしてその折々の彼の想いを、さらりとした語り口を通じて、確認させてくれる一冊。本人の描き下ろしイラスト、ギターコレクションも楽しめる。


≪著者略歴≫

前田祥丈(まえだ・よしたけ):73年、風都市に参加。音楽スタッフを経て、編集者、ライター・インタビュアーとなる。音楽専門誌をはじめ、一般誌、単行本など、さまざまな出版物の制作・執筆を手掛けている。編著として『音楽王・細野晴臣物語』『YMO BOOK』『60年代フォークの時代』『ニューミュージックの時代』『明日の太鼓打ち』『今語る あの時 あの歌 きたやまおさむ』『エゴ 加藤和彦、加藤和彦を語る』など多数。

いつも歌があった 単行本 – 2019/2/23 南こうせつ (著)

南こうせつの50曲 南こうせつ (アーティスト) 形式: CD

いつも歌があった 南こうせつ (アーティスト) 形式: CD

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