2016年10月17日
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2016年10月17日
1958年の今日、10月17日には、70年代のアイドル界の隙間に足跡を残すことになる二人の女性が誕生している。
まずは1974年6月25日、シングル「甘い経験」でビクターからデビューしたシェリー。フランス人男性と日本人女性の間に生まれたハーフだ。GSブームの頃の「青い瞳神格化症候群」も去り、アグネス・チャンなどの純粋アジア系の女の子や、返還直後の沖縄から登場した南沙織が醸し出す、ほんのりエキゾチック感覚に彩られていた当時の歌謡界において、米国人の血が入ったリンリン・ランラン(2か月先駆けて同じビクターからデビュー)や彼女の登場はまさに刺激的だった。「甘い経験」をオリコンチャート84位に送り込んだ後は、バラエティ番組での露出に伴う人気上昇に反比例するように、レコードのヒットには恵まれなかったが、75年のアイドルのレコードにしてはかなり野心的な内容のコンセプトアルバム『オズの魔法使い』や、6枚目のシングル「ひとときのシークレット」を中心に筒美京平の名曲のカバーを多数収めた『シークレット』など、隠れた人気盤を残している。
80年代に引退した後も、大阪でたこ焼き屋さんを経営するなどちょぼちょぼ話題を提供していたが、2001年、長女Lissaが「推定少女」のメンバーとして歌手デビューというニュースに内心ときめいた当時のファンも少なくないだろう。実際筆者もその一人である。秋葉原系アイドルとライオットガールズの中間を狙った、今のアイドル界から振り返るとあまりにも早すぎたと言える女の子二人組。デビュー曲を発表した時Lissaは13歳だった。
もう一人は、4年後の1978年4月25日、シングル「アンカレッジ経由パリ行き」でテイチク/ユニオンからデビューした秋ひとみ。20歳になる直前のデビューはアイドルとしては遅咲きで、どちらかというと同世代の大学生にターゲットを絞った、おっとりかつちょっぴりセクシーな魅力の持ち主だった。今で言うと吉木りさあたりに通じる感じか。王道歌謡曲を抜群の歌唱力で歌いこなす先輩・高田みづえに比べると、歌声にも「憧れのお姉さん」的親しみやすさがにじみ出ていて、それが裏目に出たのか決定打と呼べる楽曲に巡り会えなかった(オリコンでのチャートイン記録もなし)。デビュー曲が出たのがキャンディーズ解散公演の3週後で、7枚目で最後のシングル「愛のめまい」がひっそり発売されたのは、松田聖子が「風は秋色」で初のオリコン1位を記録している最中の80年10月25日だったという事実が、あまりにも象徴的ではないか。
そんな「国民的アイドル不在期」にぴったりと埋まってしまった秋ひとみの、最も知られている活動といえば、「お笑いマンガ道場」(中京テレビ)の回答者枠の一人だろう。後任の故・川島なお美のイメージが強いが、「だん吉・なお美のおまけコーナー」も元々は彼女が務めていたのである。80年代以降当たり前となった「キャンパスの恋人」的枠組みにはまっていたら、より記憶と記録に残るアイドルになっていたかもしれなかったのに。
シェリーと秋ひとみ、両者とも残したレコード数が少なくなかったことが幸いして、21世紀に入ってから『ゴールデン☆ベスト』のシリーズに組み入れられ、失われた名曲の数々がCDで聴けるようになったが、ニッチアイドルの世界はまだまだ奥深い。年度別シングルコンピなど出ないものだろうかと妄想したくなるのだ…。
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