2019年06月11日

1968年6月11日、ポール・マッカートニーが「ブラックバード」を一日でレコーディング

執筆者:藤本国彦

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ザ・ビートルズにはアコースティック・ギターの名曲がたくさんあるが、「イエスタデイ」と並びその筆頭に挙げられるのが、同じくポールが書いた「ブラックバード」だろう。いつの頃からか、「ブラックバード」が弾けたら一人前と言われるようになった気がする。


6月11日は、ポールが「ブラックバード」を一日でレコーディングした日で(も)ある。2枚組の『ザ・ビートルズ』には、たとえば「アイ・ウィル」や「マザー・ネイチャーズ・サン」など、ポールのアコースティック・ギターによる秀作が収録されているが、「ブラックバード」は、そのアルバム・セッションの初期にレコーディングされた曲でもあった。


具体的に言うと、アルバム・セッションは5月30日に「レボリューション 1」から始まったが、その曲の発展形でもある「レボリューション 9」のテープ・ループのSEをジョンがEMIの第3スタジオで作っている時に、ポールは第2スタジオで「ブラックバード」を1人で録音していた。アップル設立間もないこの時期にスタジオで撮影された宣伝用映像では、(ジェーン・アッシャーとの破局の一因になった)フランシー・シュワルツの横で「ブラックバード」を爪弾くポールの様子も見られる。


ビートルズ解散後、「ブラックバード」はポールにとって重要なライヴ・レパートリーとなった。全部のツアーとは言わないまでも、ライヴ中盤の「アコースティック・セット」に欠かせない曲として、ファンにもいまだに人気が高い。


2013年の日本公演でもそうだったが、ライヴで歌う前にポールはこの曲について「アメリカで公民権運動が盛んになり、人権問題で苦しんでいる黒人女性を励ますために書いた」と、いつしか説明するようになった。ただの「黒つぐみ」の歌じゃなく、ブラックバードが黒人女性を擬人化したものだという意味付けは、たしかに曲に深みが生まれて「やっぱり名曲は違う」と思う。けれども、「あれ、ポールは昔はそんなこと、一言も言ってなかったなあ」とも思う(笑)。


さらに(懲りずに?)ポールは、この曲について、ジョージが弾いていたバッハの『リュート組曲第1番』の「ブーレ」をヒントに書いたと、21世紀以降のライヴで、実際にバッハの曲の出だしを弾きながら説明していた。


また、ジョンは80年のインタビューで「とびきり重要な1行を書いた」と言っていて、“You were only waiting for this moment to arise”(飛び立つ瞬間だけを今かと待ちわびていた)かなと思ったが、朝日順子さんも『ビートルズは何を歌っているのか?』で“arise”という言い回しに着目していた。


このように、「ブラックバード」には数多くの逸話があるのが面白い。ポールが、この曲と同じ手法を用いて書いた「ジェニー・レン」(05年)も印象的な曲だった。最後にもうひとつ、2017年の2度目の日本公演で中盤演奏をトチッたポールを会場のファンが拍手で盛り上げた光景も忘れないものだった。


≪著者略歴≫

藤本国彦(ふじもと・くにひこ):CDジャーナル元編集長。手がけた書籍は『ロック・クロニクル』シリーズ、『ビートルズ・ストーリー』シリーズほか多数、最新刊は『GET BACK… NAKED』(12月15日刊行予定)。映画『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』の字幕監修(ピーター・ホンマ氏と共同)をはじめビートルズ関連作品の監修・編集・執筆も多数。最新作は『ビートルズはここで生まれた』。

The Beatles (The White Album) ザ・ビートルズ 1968/10/21

ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)(スーパー・デラックス・エディション)(限定盤)(6SHM-CD+Blu-ray) CD+Blu-ray, 限定版, SHM-CD ザ・ビートルズ 形式: CD

ビートルズは何を歌っているのか? (CDジャーナルムック) ムック – 2018/6/4朝日順子 (著), 藤本国彦 (監修), 杉本綾子 (イラスト)

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