2015年12月21日

40年前の本日、1975年12月21日、太田裕美「木綿のハンカチーフ」が発売

執筆者:榊ひろと

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1975年12月21日太田裕美の「木綿のハンカチーフ」が発売された。


現在のJ-POPに通じる原点との評価も高い、まさしくエポックメイキングな一曲。太田裕美にとって4枚目のシングルだが、もともとは3作目のアルバム『心が風邪をひいた日』の収録曲をリアレンジしてシングル化したもの。


当時のポップス系としては珍しい4コーラスまであるストーリー性に富んだ歌詞と男女の対話形式による構成が話題を呼んだが、遠距離恋愛に揺れる主人公たちの心情にロック/フォークの世界(とミュージシャンのキャリア)に背を向けて単身でザ・芸能界のド真ん中に乗り込んだ松本隆の状況が重ね合わせられていると見る向きも多い。


後にゴールデン・コンビと称されるようになる松本と筒美京平のコラボレーションにとっても大きなブレークポイントとなった作品であることに疑いの余地はないだろう。高音部で裏返りそうになる太田の声質の美味しい部分を見事に活かしきったメロディが素晴しいのはもちろんだが、この楽曲の肝となっているのは詞と曲のあまりにもスリリングな関係性なのである。


松本が先に書いたとされる歌詞を冷静に整理してみると、各番の前半(Aメロ)は5・7、後半(サビ)は6・4、といった具合に意外と定型的な韻律で構築されているのが解る。これに則って素直に曲を付けていくとありがちな3連のバラードとか(例えば五輪真弓が石川さゆりに提供したみたいな)になってしまいそうなものだが、そこはさすがに筒美京平は全く違っていた。詞のフレーズを自在に解体/伸縮させてメリハリと緩急の利いた展開へと巧みに変換しているのだ。それによって内容のドラマ性がさらに際立つとともにメロディそのものの躍動感や伸びやかさにもつながっている。


サウンドの方は萩田光雄のアレンジしたアルバム版を基本に筒美が華やかな彩りを加えたもので、ちょっとカントリーがかった清涼感に満ちた世界はオリヴィア・ニュートン=ジョンあたりを想起させるもの。これも南沙織(極東のリン​・アンダーソン)を育てた筒美と、アグネス・チャン(東洋のメアリー・ホプキン)の「ポケットいっぱいの秘密」(カーペンターズの“TOP OF THE WORLD”にインスパイアされた楽曲)で歌謡界に進出した松本のコンビということを考えれば必然だったのかも(「南沙織/誕生日」の項を参照)。


さらに言えば太田裕美が所属していた渡辺プロダクションとCBS・ソニーの組み合わせは、それぞれアグネスと南沙織のポジショニングを引き継いだものでもある。こうした象徴性の高さもあって彼女は歌謡曲とニューミュージック、あるいはアイドルとアーティストの間の架け橋として語られることも多いのだが、何よりも重視されるべきなのは二人のクリエイターの間に立って、その曲作りに絶妙の化学反応を誘発させた触媒としての存在感の大きさなのだろう。

『木綿のハンカチーフ』写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト

ソニーミュージック太田裕美公式サイトはこちら>

太田裕美

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