2018年07月16日
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2018年07月16日
伝説のバンド、はっぴいえんどのドラマーから職業作詞家に転じ、挙げたらキリがないほどのヒット曲を送り出してきた松本隆。本日は時代も世代も超えて愛され続ける作詞家の69回目の誕生日である。
1949年7月16日、東京・青山で生まれた松本隆は生粋の都会っ子。中学から大学まで慶應義塾に通った元祖シティボーイといえる存在だ。のちに松本の代名詞となる“風街”は、彼が青春時代を過ごした街、つまり青山、渋谷、麻布界隈の原風景のことを指す。68年、細野晴臣が在籍していたバンド“バーンズ”のドラマーとして音楽活動を始めた松本は、小坂忠らが結成した“エイプリル・フール”に細野とともに参加。69年には、細野、大瀧詠一、鈴木茂と“バレンタイン・ブルー” (翌年“はっぴいえんど”に改名)を結成し、この頃からバンドの作詞も手がけるようになる。日本語ロック論争を巻き起こし、後年、そのパイオニアとして高い評価を得るはっぴいえんどだが、当時は商業的な成功に至らず、72年に解散。松本は“オリジナル・ムーンライダーズ”の一員として活動するかたわら、プロデューサー業も開始する。記念すべき初プロデュース盤は南佳孝の1stアルバム『摩天楼のヒロイン』(73年8月)だが、2018年8月にはデラックス・エディションが再発されるなど、現在では名盤としての評価を確立しているこのアルバムも、発売当時は大きなセールスに結びつかなかった。やがて「食べていくのに手っ取り早いのは作詞家になることだ」と思い立った松本はオリジナル・ムーンライダーズを脱退。以後、職業作詞家としての道を歩み始める。
その後の活躍は音楽ファンなら周知のとおり。これまでに作詞を手がけた作品は2100曲以上で、シングル総セールスはおよそ5,000万枚。「セクシャル・バイオレットNo.1」(79年/桑名正博)、「赤いスイートピー」(82年/松田聖子)、「硝子の少年」(97年/KinKi Kids)、「スワンソング」(09年/KinKi Kids)など、各ディケイド(10年紀)でオリコン1位を獲得し、今までに47作のシングルをヒットチャートのトップに送りこんでいる。松本作品の特徴は、心の痛みやときめきを描いた青春小説のような文学性と、時代に左右されない普遍性、そして“風街”というキーワードに象徴される、都市やリゾート地(海や山に出現した都会的空間)を舞台にした映像的なストーリーが展開されることが挙げられる。従来の歌謡曲にありがちだった情念や愛憎、自己憐憫とは対照的な、知的で繊細かつ洗練された世界観。それは10歳で「木綿のハンカチーフ」(75年/太田裕美)、12歳で「てぃーんずぶるーす」(77年/原田真二)、15歳で「君は天然色」(81年/大滝詠一)に触れた筆者にとって、これから始まる青春時代の予告編を観るような、憧れと共感性に満ちた作品群であった。
近年はテレビや雑誌で特集を組まれることも多く、初期の作品「ポケットいっぱいの秘密」(74年/アグネス・チャン)に「あ」「ぐ」「ね」「す」の折句をしのばせていたことが広く知られるようになるなど、様々なエピソードが語られているが、本稿では稀代のヒットメーカーが、ほぼ8年ごとに節目を迎えてきたことを指摘しておきたい。
最初の節目は「73年」。そう、職業作詞家としてデビューした年である。チューリップに提供した「夏色のおもいで」は同年10月にリリースされ、オリコン14位のスマッシュヒットを記録。まずまずの成功を収めた松本は翌年、アグネス・チャンや太田裕美など、アイドル系の歌謡曲にも進出し、「木綿のハンカチーフ」で広くその名を知られることになる。
次の節目は「81年」。前年夏に最愛の妹を病気で失った松本はしばらく休筆していたが、80年12月にリリースされた近藤真彦の「スニーカーぶる~す」を皮切りに作詞活動を再開。同作が大ヒットするなか迎えた81年は、年初から「スローなブギにしてくれ」(1月/南佳孝)、「ルビーの指環」(2月/寺尾聰)、「白いパラソル」(7月/松田聖子)、「ハイスクールララバイ」(8月/イモ欽トリオ)・・・とビッグヒットが続き、シングルセールスの作詞家部門で初めて首位の座を獲得する。一方、アルバムでも盟友・大滝詠一の『A LONG VACATION』(3月)や松田聖子『風立ちぬ』(10月)など、全作詞を手がけたアルバムが大ヒット。作品的な評価も高く、名実ともに作詞家のトップに立つ。
81年から88年まで、8年連続で作詞家部門のトップ3に君臨し続けた松本だが、常に結果を求められる生活に疲弊したのだろう。時代が昭和から平成に移り、40歳を迎えた「89年」を境に仕事量をセーブするようになる。奇しくもこの年リリースされたWinkの「One Night In Heaven~真夜中のエンジェル~」を最後にオリコン1位からも遠ざかり、90年代はクラシックにオリジナル詩をつけたり、歌曲を現代口語に訳したりする活動に傾倒していった。
その松本が歌謡界の第一線に復帰したのは「97年」。この年デビューしたジャニーズの新星、KinKi Kidsの「硝子の少年」の作詞を手がけ、8年ぶりのオリコン1位を獲得した。自身最大のセールス(180万枚)を記録した同作で、作詞家としての賞味期限が切れていないことを実証した松本は、2000年代に入ってもKinKi Kidsや中川翔子、クミコらの作品で手腕を発揮する。
「質」と「量(売上)」の両方を追求し、記憶にも記録にも残る作品を生み出し続けてきた松本隆は今年、作詞家デビュー45周年、来年(2019年)には古希を迎える。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、松本が愛してきた街はその姿を大きく変えつつあるが、現在は京都と神戸を拠点とする詩人が紡ぐ詞世界はこれからも変わらぬ感性で我々を魅了してくれるに違いない。
桑名正博「セクシャル・バイオレットNo.1」アグネス・チャン「ポケットいっぱいの秘密」チューリップ「夏色のおもいで」太田裕美「木綿のハンカチーフ」近藤真彦「スニーカーぶる~す」Wink「One Night In Heaven~真夜中のエンジェル~」ジャケット撮影協力:鈴木啓之
≪著者略歴≫
濱口英樹(はまぐち・ひでき):フリーライター、プランナー、歌謡曲愛好家。現在は隔月誌『昭和40年男』(クレタ)や月刊誌『EX大衆』(双葉社)に寄稿するかたわら、FMおだわら『午前0時の歌謡祭』(第3・第4日曜24~25時)に出演中。近著は『作詞家・阿久悠の軌跡』(リットーミュージック)。
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