2018年08月27日
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2018年08月27日
1981年8月27日、松田聖子の6枚目のシングル「白いパラソル」がTBSの歌番組『ザ・ベストテン』で1位を獲得した。
この曲は、『ザ・ベストテン』史上、初の「初登場1位」を記録した作品である。純粋にレコードのセールスのみでカウントされるオリコン・チャートとは違い、有線やハガキのリクエストなども順位に考慮される(特に後者の比重は大きい)ため、なかなか初登場1位にはなりづらい。つまり、いかに当時の松田聖子のアーティスト・パワーが大きかったかを象徴する出来事であった。
松田聖子の第一期は、三浦徳子=小田裕一郎コンビによるデビュー曲「裸足の季節」から「風は秋色」までのシングル3作アルバム2作を前期、作曲が小田裕一郎から財津和夫へとチェンジする「チェリーブラッサム」~アルバム『SILHOUETTE~シルエット』までを後期とする。作詞が三浦から松本隆に交代した「白いパラソル」からは第二期のスタートと考えていいだろう。
担当ディレクターの若松宗雄は、松田聖子の楽曲制作に関して「季節感」を反映させることを重視していた。そして大事なのは「鮮度」であるとも。楽曲をギリギリまで聖子本人に渡さなかったそうだが、それは「練習するほど、上手くはなるが鮮度は落ちていく」からだそうである。「白いパラソル」もその形で制作されたそうである。
もちろん、サウンドはかなり丁寧に作られているが、トラックダウンは何度もやり直し、音やタイミングは合っていくものの、曲の持つニュアンスは失われていった。エンジニアも煮詰まってしまい、もう一度オケ録りをしたスタジオでトライしてみたところ、一発でOKの音が出たという。「鮮度」を重視する若松ディレクターの拘りで生まれた楽曲であった。
また、この曲は松田聖子のシングルで、初めてのミディアム・テンポの楽曲だ。ジャケット写真もおなじみの顔のアップではなく、引きの全身写真を使っている。このことも、それまでとやや異なる変化を感じさせ、いささか地味なトーンの曲調に、彼女が所属するサンミュージック側からも、不安視する声があったという。
そして、もうひとつのエポックとしては、この曲で聖子のシングル初起用となった松本隆の存在。もともと松本は、聖子のデビュー曲「裸足の季節」を聴いた際、「この人の詞はぼくが書くべきだ」と直感したそうである(『松本隆 風街図鑑1969-1999』ライナーより)。そして、まずはアルバム『SILHOUETTE~シルエット』に「白い貝のブローチ」を提供する。この曲は夏前にリリースのアルバムながら、初秋のムードを漂わせた楽曲で、従来の三浦徳子の、アクティヴで伸びやかな女性像とはやや異なる、切なさとデリケートな心理描写に重点を置いた詞となっている。面白いのは「白い貝のブローチ」で歌の主人公は髪にハイビスカスをさすのだが、「白いパラソル」ではジャスミンの花に変わっている。そんなところにも連続性を感じさせるのだ。この「白い貝のブローチ」は財津和夫の作曲。『SILHOUETTE~シルエット』では半数の曲を財津が作曲しており、この松田聖子第一期の後期は財津が楽曲面を主導していたのだ。作詞家か作曲家のどちらかをチェンジして、前後の作品と上手くスライドさせながら楽曲の連続性を持たせていく方法は、「季節感」というソニー・アイドルに必須のコンセプトがあってこそ。大きくイメージ・チェンジすることなく自然にシンガーとして成長過程をみせていくのに、実に効果的であった。
「白いパラソル」には他にも仕掛けが有り、「風を切るディンギー」というフレーズに、当時ハッとした人は多いだろう。この81年夏、ベストセラーとなっていた大滝詠一の『A LONG VACATION』のリード・トラックでもある「君は天然色」の一節に出てくる「渚を滑るディンギー」と、やはりイメージの連続性を感じさせるものがあった。というより「白いパラソル」のヒロインと「君は天然色」の女性は同一人物か? と思わせ、まるであわせ鏡のような構造になっているのだ。当時、周囲ではこの「ディンギー」のフレーズ1つで「松本隆が作詞に起用されたことだし、もしかすると次の作品は大瀧詠一の曲なのでは?」と期待する向きも多かったように記憶している。実際、それは次作「風立ちぬ」であっさりと叶ってしまい、それどころか『A LONG VACATION』と対になっているかのようなアルバム『風立ちぬ』のA面5曲を聴くに至って大興奮、となったのである。
一聴すると地味に聞こえる「白いパラソル」だが、松田聖子の第一期と第二期を結ぶ、重要なクッションとなった楽曲なのだ。
≪著者略歴≫
馬飼野元宏(まかいの・もとひろ):音楽ライター。月刊誌「映画秘宝」編集部に所属。主な守備範囲は歌謡曲と70~80年代邦楽全般。監修書に『日本のフォーク完全読本』、『昭和歌謡ポップス・アルバム・ガイド1959-1979』ほか共著多数。近著に『昭和歌謡職業作曲家ガイド』(シンコーミュージック)、構成を担当した『ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代』(リットー・ミュージック)がある。
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