2018年04月09日

1990年の本日、Wink「Sexy Music」がオリコン・チャートの1位を獲得

執筆者:濱口英樹

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本日、4月9日はWink「Sexy Music」が1990年にオリコン・チャートの1位を獲得した日となる。


1959年にデビューしたザ・ピーナツ以来、あまたの女性デュオが日本の音楽界を彩ってきたが、商業的な成功を収めたユニットは実はそれほど多くない。オリコンの集計がスタートしたのは68年なので、それ以前から活躍していたザ・ピーナツやこまどり姉妹は対象外となってしまうが、この50年間で「シングル1位」を獲得したことのある女性デュオはわずかに7組。そのうち「紅白歌合戦出場」と「日本レコード大賞受賞」を果たしたWinkは、やはり“三冠”を達成しているピンク・レディーと並ぶ、国民的デュオと言っていいだろう。


そのWinkは、69年2月22日生まれの鈴木早智子と、70年2月23日生まれの相田翔子によって、88年に結成された。2人ともアイドル誌『UP TO BOY』(ワニブックス)主催のミスコンテストでグランプリを獲得していたが、当初は所属事務所が別々で、面識もなかったという。そんな2人を結び付けたのは、当時ポリスターに在籍していた音楽プロデューサーの水橋春夫であった。サイケデリックバンドの先駆けとして知られるジャックスのギタリストだった水橋は、バンド脱退後、ディレクターに転身。横浜銀蝿や岩井小百合、山瀬まみらを手がけていたが、その水橋が2人の声の相性の良さに惚れこんだことがWink誕生のきっかけとなる。88年4月、「Sugar Baby Love」(英国のバンド、ルベッツが74年に放ったヒット曲の日本語カバー)でデビューした彼女たちは、水橋の洋楽指向を反映した楽曲を次々と発表。当時、ユーロビートの女王として君臨していたカイリー・ミノーグのアルバム曲「Turn It into Love」をカバーした3rdシングル「愛が止まらない」(88年11月)がオリコン1位を獲得するロングセラーとなったことで、トップアイドルに登りつめる。



時代は昭和から平成、80年代から90年代への変わり目にあった。音楽業界もアナログ盤からCDへの移行期にあたり、88年2月には8cmのCDシングルが登場。松田聖子から始まった空前のアイドルブームは87年デビューの光GENJIを最後に徐々に収束し、替わってバンドブームが到来する。テレビ界では87年に『ヤンヤン歌うスタジオ』(テレビ東京系)、88年に『ヤングスタジオ101』(NHK)、89年に『ザ・ベストテン』(TBS系)、90年に『歌のトップテン』(日本テレビ系)と『夜のヒットスタジオSUPER』(フジテレビ系)が相次いで終了。アイドルの主戦場だった歌番組が次々と姿を消す中、89年にスタートしたオーディション番組『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS系)から多くのバンドがメジャーデビューを果たしていた。Winkはそんな“アイドル冬の時代”に、人形風のゴージャスな衣装を身に纏い、ニューウェイブ系のエレクトロポップを無機質に歌い踊る、独特のスタイルで人気を確立。5thシングル「淋しい熱帯魚」(89年7月)は日本レコード大賞や全日本有線放送大賞を受賞するなど、デビューから2年足らずで歌謡界の頂点に立った。


「Sugar Baby Love」や「愛が止まらない」のみならず、アルバムでも新旧の洋楽を多数カバーしていた彼女たちは、デビュー3年目の第1弾シングルで、英国の姉妹グループ、ノーランズの「Sexy Music」をカバーする。オリジナルは本国で80年に発売されたアルバム『Making Wave』に収録されたダンスチューンだが、日本では81年3月にシングル化されており、同年開催の東京音楽祭でグランプリを獲得したこともあって、オリコン最高7位のヒットを記録している。それから9年、門倉聡がアレンジを手がけたニューウェイブサウンドに、及川眠子の情熱的な日本語詞が乗ったWink盤は90年3月28日にリリースされ、4月9日付けのオリコンで初登場1位をマーク。「愛が止まらない」から5作連続の1位を達成し、年間24位のヒットとなった。当時の歌謡界は、荻野目洋子が「ダンシング・ヒーロー」(85年)でブレイクして以降、石井明美「CHA-CHA-CHA」(86年)、長山洋子「ヴィーナス」(86年)、BaBe「Give Me Up」(87年)、森川由加里「SHOW ME」(87年)など、ユーロビート系の洋楽をカバーした作品が続々とTOP10入りしていたが、複数のカバー作品(「愛が止まらない」「涙をみせないで」「Sexy Music」の3作)で1位を獲得したのはWinkのみ。その成功は、洋楽との相性の良さもさることながら、どんな曲をカバーしても「これぞWink」と思わせるオリジナリティを構築した水橋のプロデュースによってもたらされたものだといえるだろう。



その後のWinkは、1位獲得こそならなかったものの、コンスタントにヒットを放ち、96年の活動停止までに25作のシングルを発表。うち15作がTOP10入りを果たし、ピンク・レディー、Puffyに続く女性デュオ第3位のシングル総セールスを記録している。デビュー30周年のメモリアルイヤーを迎えた2018年は、2月9日に30周年特別サイトと、各種SNSの公式アカウントを開設。デビュー日にあたる4月27日には、スペシャル企画第1弾として、「Sexy Music」を含む初期シングル8作品が7インチのアナログ盤として復刻発売されるなど、ここに来てWinkをめぐるニュースが続いている。活動再開への布石であってほしい。そう期待しているのは筆者だけではあるまい。


≪著者略歴≫

濱口英樹(はまぐち・ひでき):フリーライター、プランナー、歌謡曲愛好家。現在は隔月誌『昭和40年男』(クレタ)や月刊誌『EX大衆』(双葉社)に寄稿するかたわら、FMおだわら『午前0時の歌謡祭』(第3・第4日曜24~25時)に出演中。近著は『作詞家・阿久悠の軌跡』(リットーミュージック)。

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