2016年01月09日

本日はサリー、岸部一徳の誕生日。69歳となる。

執筆者:小野善太郎

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今や超ベテラン役者として、一般的な認知度はジュリーやショーケンを上回るのではないだろうか。岸部一徳、今日は69歳の誕生日。


生年は1947年だが、早生まれだから学年的には1946年4月以降生まれと一緒になる。

この学年には、同じくタイガースのメンバーだった瞳みのる、森本太郎のほかにも、フォーク・クルセダーズの北山修と加藤和彦、また「帰って来たヨッパライ」などの作詞者・松山猛や、杉田二郎、さらに岡林信康や吉田拓郎も居る(ちなみにジュリーは2学年下、ショーケンは4学年下)。

しかも、ハイティーンだった1965年、上記の拓郎以外は全員が京都市に在住。今も昔も世界的にも有名な街とはいえ、狭い一地域であるのに、数年後には日本のポピュラー音楽界に革命的な足跡を残すことになる面々が集結していたのには素直に驚いてしまう。


さて、グループサウンズ全盛期には中学生だった私の子供心に、タイガースは「美女と野獣のバンド」と直感されたものだ。デビュー・シングル「僕のマリー」のB面「こっちを向いて」のリード・ヴォーカルが何故か岸部だったことから始まって、独特の低音ヴォイスとアクションも音も動き回るベース・プレイは際立ち、ジュリーと対照的に屹立していたと思う。タイガース時代にソロ・アルバムをリリースしたのもジュリーと、そしてサリー&シローとしての岸部兄弟だけだったし、その美女と野獣はタイガース解散後のPYGでも同伴、ジュリーはソロ歌手になった後もPYG後継の井上堯之バンドと行動を共にしていた訳で、ならばタイガース(の核)は存続していたと見ることも可能かも。

だが、ついに井上バンドから岸部が脱退して役者として再デビューしたのは1975年、ジュリー主演の伝説的TVドラマ「悪魔のようなあいつ」においてだったが、同時期にジュリーが結婚しているのも、何だか象徴的な気がしてならない。


その後も、日劇解体に伴うタイガース再結成、それに続くタイガース同窓会はもちろん、タイガースメモリアルクラブバンドの初期、Tea for Three(ジュリー+岸部+森本太郎)、瞳みのるが復活したライヴ、そしてオリジナルメンバー全員によるタイガース再結成ライヴまでの全部に岸部は当然の如く参加しつつも、「タイガースマニア」と銘打たれたユニット(森本+加橋かつみ+岸部シロー+ジュリーのモノマネで知られた岩本恭生)には不参加だったのだが、そこにはジュリーが居なかったということで、実に統一性が保たれている。


そうした音楽の経歴とは関係なく、すでに役者としての評価は独自に確立しているが、主演のみならず助演でも作品のトーンに大きな影響を及ぼしている感があるのは、かつてのバンドにおけるベーシスト、およびコーラス・ワークでの低音担当という土台的な存在感と似通っている。


往年の音楽ファンにとって興味深い映画も多く、特に大林宣彦監督「青春デンデケデケデケ」でエレキに熱中する高校生に理解を示す教師、本田隆一監督「GSワンダーランド」でタイガースの売り上げを横目に社員にハッパをかける演歌系レコード会社の社長、そして緒方明監督「いつか読書する日」での田中裕子と微妙な恋愛関係を演じる役などは確信犯的キャスティングだったに違いないが、何だか近年はジュリーと岸部のビジュアルは接近している気もするので、田中裕子と「ずっと思って来たこと」を体験しちゃうシーンは見ている方も複層的に緊張スル。

また、阪本順治監督「大鹿村騒動記」はショーケンや松田優作の先達である個性派役者の筆頭だった原田芳雄の遺作として記憶にも記録にも残る作品だが、そこでの自然体としか思えない堂々たる脱力演技は、原田最後の渾身演技をさりげなくも確実に支えていて見応えあり。


かの笠智衆と並び評されることもある岸部だが、とりわけ笠とのコンビ作が印象に残る世界的巨匠・小津安二郎監督を山田洋次監督「キネマの天地」で演じたのはビジュアル的にも正にピッタリだった。今度は、小津と同じく大柄でもあった黒澤‘世界のクロサワ’明監督の晩年を「ラブリーに」演じる映画なんて、ぜひ観たいものだ。

実は、黒澤映画の撮影現場を間近で体験した、とある若い映画監督と最近そんな話で盛り上がったのだが、決して偉人伝としてではなく、そのように黒澤を描いた映画が作られたならば、少なくともカンヌ映画祭での最高賞は確実だろう。…そんな初夢を、見た。

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