2016年08月28日

[第14回読者投稿コラム]40年経ち、再評価される埋もれた名曲・小川みき「燃える渚」とは? text by 佐々木俊英

執筆者:読者投稿

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

アイドル歌謡を手がけヒットを量産した筒美京平でも日の目を見ず埋もれた名曲もある。

73年8月に発売された小川みきの「燃える渚」という曲がまさにその1曲である。


本名は岡田仁希子、1970年みきめぐみとして「ふじさん」でデビュー、71年「サマーサンデー」は岡田みきでシングルを出した後、72年移籍したフィリップスでは小川みきに改名、11月に三枝伸の会心作「マイ・ロスト・ラブ」で再デビュー。翌73年3月に安井&筒美の初コンビによる「雨の中の口づけ/小さな過去」が発売。7月には同コンビの「乱暴な少年」がシングルA面に用意されていたが、B面だった「小さな過去」を安井が一部歌詞を書き換え「燃える渚」に改題し急遽差し替えてリリースされた。


筒美にしては珍しいベース、ドラムのリズム隊を軸にホーン、ストリングスの構成。前作ではイントロがホーンだったものをトレモロギターに変更、74年に流行するオールディズ風スタイルにまとめた佳作であった。レコードジャケットも最初は地味なものから途中で夏っぽいものに変更してヒットを狙うがオリコンにチャートインしないまま小川みきの夏は終わった。


73年冬からはドラマへ進出、TBS系「時間ですよ・昭和元年」などに出演した後、74年3月に安筒コンビ3作目のこれもまた佳作な「甘い出来事」に前回見送られた「乱暴な少年」をカップリングして発売された。結局フィリップス時代での4枚も不発のまま、75年に今度は小川美希に改名、「夜明けの刑事」「赤い疑惑」に出演後CBSソニーに移籍し「朝食」が最後のシングルとなった。(「乱暴な少年」は後の「アパートの鍵」(小林麻美)につながる路線であった)


彼女自身74年2月の月刊明星で「ドラマのセリフはなかなかおぼえられないし、歌も思うようにヒットしてくれないし、もういっそのこと卒業したらお給料がいちばんいい伊勢丹デパートに就職しちゃおうかしら……」。 と冗談とも本音とも取れるコメントを残している。当時高校在学中で、児島みゆき似のキュートな様相とあってアイドル性は十分であったが、レコード会社が変わる度の改名で知名度が低かったのも要因のひとつ、また「燃える渚」を夏用のシングルとして温存し、より強力なセールスを行っていたらヒットチャートに上ったかもしれない。


歌手としては一度もオリコンチャートに登場することなく消えていった小川みき。

1998年作家30周年記念の「筒美京平ウルトラ・ベスト・トラックス/ポリグラム・ガールポップ編」で筒美作曲A面3曲が待望復活され、2006年には「Hotwax presents 歌謡ポップス・コレクション1970’S」で「マイ・ロスト・ラブ」を含む4曲がメインを飾るなど、歌手小川みきが改めて評価されはじめつつある。

筒美京平ウルトラ・ベスト・トラックス ~ポリグラム・ガール・ポップ編

Hotwax presents 歌謡ポップス・コレクション 1970’s「ガールズ・イット・エイント・イージー」ユニバーサル編

  • コロムビア・ガールズ伝説
  • ダイナマイトポップス
  • 読者の投稿コラム大募集!

関連記事

  • ツイート

Pagetop ↑

コラム一覧

一覧

音楽ジャンル

カテゴリー

執筆者一覧

一覧

SNS