2017年04月03日
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2017年04月03日
1978年の4月3日、ピンク・レディーの7作目のシングル「サウスポー」が1位を獲得した。彼女たちにとって初の、オリコン・チャート初登場1位作品である。
前作「UFO」が彼女たちにとっての最高セールスを記録したほか、この「サウスポー」も9週連続1位を獲得。さらには同年のオリコン年間ベスト10でも1位から3位までをピンク・レディーが独占するなど、77年後半から続く勢いをそのまま継続させており、78年はまさしくピンク・レディーの年であった。
そんな状況下でリリースされた「サウスポー」だが、この曲もまたデビュー以来継続している阿久悠=都倉俊一コンビによるもので、振り付けの土居甫、ビクターの飯田久彦ディレクターといった鉄壁の布陣で制作されている。ただし、最初にレコーディングされた「サウスポー」は、お蔵入りとなっている。
最初に作られたバージョンは、もう少しおとなしめでテンポもミディアムに落としてあり、歌詞の内容も、野球という設定は変わらないものの、どちらかといえば「女性のピッチャーがいたとしたらどうなるか」といったコンセプトで、投手と打者の対決を恋の駆け引きになぞらえた歌詞になっている。「私左きき サウスポー」というサビ部分は、「ウォンテッド」に(指名手配)とカッコ書きのサブタイトルを付けさせられた阿久悠の、意趣返しともとれる説明的な詞だが、麻丘めぐみ「わたしの彼は左きき」以来のキャッチーな“左きき”の使われ方でもある。
このバージョンは、一旦レコーディングを済ませたものの、これまでの作品に比べスピード感に欠けると判断した飯田ディレクターにより、阿久、都倉ともに書き直しを伝えられた。都倉が書いた別の曲をもって飯田が阿久の元を訪れ、翌日の夜にレコーディングというタイトなスケジュールの中、阿久は一晩で新たな詞に書き直した。都倉も半日で新たなアレンジを施すという突貫作業で完成されたのが、現在我々が知る「サウスポー」のバージョンである。
新しい詞には「左きき」「女性であること」など説明的な部分は排除され、“私ピンクのサウスポー”と何の説明もなしに左ききの女性ピッチャーが王貞治をイメージさせる打者と対決する、荒唐無稽で滅法面白い内容となっている。都倉の曲もこれまでのピンク・レディー作品で最も速いテンポで、イントロの“ズタタ/ズタタ/タタ”の下降旋律や、“スーパースターの……”部分の8分音符畳みかけなど、ザ・都倉俊一印ともいえる楽曲。これは同じ阿久=都倉コンビが70年代前半に手がけた山本リンダの一連の作品、ことに「狂わせたいの」との類似を感じさせる。「狂わせたいの」は、リンダの再ブレイクとなった「どうにもとまらない」に続く復活第2弾で、リンダを一発屋で終わらせないために、さらなるエネルギッシュでスピード感に溢れた楽曲を提示したものであった。つまりは都倉俊一にとって、ここ一番という時の、必殺のメロディー&アレンジパターンなのである。
次作「モンスター」以降、完全にお子様向けにシフトしたといわれるピンク・レディーだが、「サウスポー」の書き直しにより恋愛要素を完全に排除したことで、子供向け路線への布石は整っていた。「ウォンテッド」あたりまで残っていたお色気イメージは、ギリギリ2人のホットパンツ衣装に残されていたのかもしれない。
「サウスポー」はその後、高校野球の応援ソングとして定着し、ブラスバンドがこの曲を演奏するシーンは甲子園球場の風物詩ともなった。同じように高校野球の応援団に愛されるもう1つの曲が、やはり都倉俊一編曲による山本リンダの「狙いうち」である。都倉メロディーのイケイケなパワーは、テンションを高める効果に溢れていることを証明したともいえる。
ちなみに「サウスポー」のお蔵入りバージョンは、長い間横浜のビクター倉庫に保管され、ディープなファンの間でのみ、その存在が知られていたが、2008年9月に発売された阿久悠作詞のコンピレーションアルバム『続・人間万葉歌~阿久悠作詞集』に収録され、日の目を見ることとなった。
≪著者略歴≫
馬飼野元宏(まかいの・もとひろ):音楽ライター。月刊誌「映画秘宝」編集部に所属。主な守備範囲は歌謡曲と70~80年代邦楽全般。監修書に『日本のフォーク完全読本』、『昭和歌謡ポップス・アルバム・ガイド1959-1979』ほか共著多数。
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