2017年01月13日
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2017年01月13日
エンケンの愛称で親しまれ、1969年のデビュー以来、ぶれることなく我が道を突き進む“純・音楽家”遠藤賢司。本日1月13日は遠藤賢司の誕生日。
アーティストとしての遠藤賢司は、多くの人が語っており、よく知られているが、実はエンケンは圧倒的な映画マニアでもあり、その膨大な知識と豊富な映画体験、そして深い含蓄が自身の音楽にも随所で反映されているのだ。名作の誉れ高い80年発表のアルバム『宇宙防衛軍』は、タイトルからもお分かりの通り、東宝特撮映画『地球防衛軍』を思わせるスペース・オペラ的な内容だが、遠藤は東宝特撮のサントラはもとより、日本の映画音楽は宝であると公言、伊福部昭や黛俊郎、芥川也寸志ら映画音楽の作家に強いリスペクトをささげている。演歌もロックもクラシックもすべて同列に聴くという遠藤ならではの感性といえよう。
何より、最初に感動した映画が、中学3年生の時に観た三隅研次監督の『座頭市物語』だそうである。ほかに好きな映画は伊丹万作監督の『赤西蠣太』、加藤泰監督の『沓掛時次郎 遊侠一匹』、中川信夫監督の『地獄』、森﨑東監督『喜劇 女は男のふるさとヨ』と枚挙にいとまがない。洋画ではデイヴィッド・リンチ監督『イレイザーヘッド』やセルジオ・コルブッチ監督『続・荒野の用心棒』などなど。意外なところではホー・メンファ監督『北京原人の逆襲』も好みで、パク・チャヌク監督の韓国映画『オールドボーイ』の格闘シーンも大好きだそうである。
音楽と映画の関わりを挙げるなら、『地球防衛軍』の前年に発売された『東京ワッショイ』を挙げたい。四人囃子がバックをつとめ、1曲目の「東京退屈男」からまるでSF映画のオープニングのような電子音+大らかなメロディーでスタート。祭囃子のようなノリとファンキーなサウンドを合体させた表題曲、昭和歌謡と電子音楽を融合させ、クラフトワークを意識したという「哀愁の東京タワー」、そして現在もライヴの定番となっている「不滅の男」まで、破格のサウンド・メイクで作られた1枚だ。このアルバムの大ファンであった映画監督の長嶺高文が、『東京ワッショイ』そのものをモチーフにして映画を作りたいと申し出て、歌は勿論のことエンケンに出演を依頼、『ヘリウッド』のタイトルで公開される運びとなった。劇中でエンケンが「東京ワッショイ」を歌うシーンはこの映画の白眉である。ちなみにこの作品、現在ではカルト映画として評価が高い。
エンケンはデビュー当時に佐々木昭一郎演出のNHKドキュメンタリー『さすらい』に出演、番組の中で人の居ないガランとした日比谷野外音楽堂で「カレーライス」を歌っている。また堤幸彦監督の『20世紀少年』にも出演、もともと原作者の浦沢直樹が、エンケンをモチーフにして主人公に「遠藤ケンヂ」の名をつけたところから、映画にも是非と声がかかっての出演となった。
2013年には熱心なエンケン・ファンである宮藤官九郎が自身の脚本・監督作『中学生円山』にエンケンをキャスティング。65歳のボケ老人の役だが、音楽家として起用したいという意向があり、元々シンガーであったという設定で、老人の部屋には「カレーライス」をもじったパロディ・ジャケットも飾られていた。そして劇中では「ド・素人はスッコンデロォ!」と「おでこにキッス」の2曲を披露、ことに「ド・素人~」は圧巻のパフォーマンスが繰り広げられ、これまた映画のハイライト・シーンとなっている。
だが、何よりエンケンの最強・最高の映画作品といえば2005年に公開されたドキュメンタリー映画『エンケン対日本武道館』に尽きる。アルタミラ・ピクチャーズの桝井省志のプロデュースで、おまけにエンケン自身が監督と脚本も担当し、映画のために借り切った無人の日本武道館でひたすら歌い続けるエンケンの姿は、観る者に熱い感動を与えた。それは自分との究極の勝負だったとのちに本人が述懐しているが、広大な無人の武道館で力の限り歌い続けるエンケンの頭の中では『カンフー・ハッスル』や『燃えよカンフー』をライバル映画に設定していたという。自身の創造魂と逃げずに真っ向勝負する音楽家としての姿勢が、彼のステージを観たことのない者にも伝わる、熱い音楽ドキュメンタリーであった。こうして、熱烈なエンケン・ファンである製作者たちによって、いくつもの魅力的な映像が残されることとなったが、どの映画にもライヴ・シーンがあるのは、やはりエンケンはライヴ・パフォーマンスが最大の魅力であることを映画制作側もよくわかっているのである。
昨年、がんによる闘病を公表したエンケンだが、同年の9月21日には渋谷CLUB QUATTROにてライヴ「遠藤賢司withサニーデイ・サービス『満足できるかな』」を開催、圧巻のパフォーマンスで健在ぶりを証明した。このライヴ・アルバムが先ごろ発売になったが、さらに本日1月13日には、全編が鍵盤インストによるオリジナルアルバム『けんちゃんのピアノ画(スケッチ)』がリリースされる。エンケンというとギターのイメージが強いが、前述のライヴでもピアノのプレイを披露しており、本作はまさにエンケンの頭の中で鳴り響くメロディーをピアノを通して表現した作品となっている。そして、この日は生誕70周年を記念して、数多くのゲストを迎え渋谷クラブクアトロにて、「エンケン祭り」が開催される。古希を迎え、ますますアクティヴに活動する遠藤賢司、まだまだ期待できそうだ。
≪著者略歴≫
馬飼野元宏(まかいの・もとひろ):音楽ライター。月刊誌「映画秘宝」編集部に所属。主な守備範囲は歌謡曲と70~80年代邦楽全般。監修書に『日本のフォーク完全読本』、『昭和歌謡ポップス・アルバム・ガイド1959-1979』ほか共著多数。
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祝!生誕70年「エンケン祭り」
2017年1月13日開場 18:00 / 開演 19:00
渋谷:クラブクアトロ
出演:遠藤賢司 / エンケンバンド(遠藤賢司 [Vo][Gt] , 湯川トーベン [Ba] , 石塚俊明 [Dr] / フラワーカンパニーズ / 鈴木慶一 / PANTA / 遠藤ミチロウ / 大友良英 / 大槻ケンヂ / 曽我部恵一 他
料金:前売 5,000円 / 当日 5,500円 (税込・整理番号付・ドリンク別)
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