2015年05月20日

[不定期連載]僕の髪が肩まで伸びて よしだたくろう! 第1回 よしだたくろう「イメージの詩」「マークⅡ」デビュー

執筆者:みうらじゅん

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1970年、45年前の今日5月20日、吉田拓郎(当時はよしだたくろう)のデビューシングル「イメージの詩」がエレックレコードよりリリースされた。(B面はマークⅡ)
広島フォーク村名義のアルバム『古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう』の中の一曲として70年4月に発表されたのをリテイクしたもの。


今回の文章は、みうらじゅんによる不定期連載「僕の髪が肩までのびてよしだたくろう!」からの抜粋。当時12歳であったみうらじゅんが体験した「イメージの詩でイメージしたこと」。


小学校高学年からラジオの深夜放送を聞いていました。小学生ですからなぜかうしろめたさを感じながら、夜な夜な一人ラジオの世界に入り込んでいきました。この「うしろめたさ」こそがアングラの世界でもあり、サブカルへの道の仏像、怪獣に次ぐ出発点だったと言えます。時は関西系フォークソング大隆盛!そんな中、広島フォーク村出身のよしだたくろうが自分の前に現れたわけです。


衝撃的の度を超す衝撃でした。深夜放送で初めて「イメージの詩」を聴いた翌日、近所のレコード屋でシングル盤買ってきました。それまで日野てる子の「夏の日の想い出」や渚ゆう子の「京都慕情」はマセガキとして買った記憶はありますが、自主的にこれだ! と思って買った最初のレコードは、よしだたくろうの「イメージの詩」。仏教系の中学校に入って、部活もやらずひたすら孤独な自分にとって、よしだたくろうは「社会で一人で頑張っている」唯一無二のヒーローであり、スーパースターだったのですよ。
歌詞がやたら長い。後にいろいろとネタはわかっていくんですが、当時としては驚異の長さでしょ。でも、こちとらここから入っているからこの長さが普通にかっこよく思えた。


B面の「マークⅡ」、「イメージの詩」もそうですけど、それまでこんなタイトルのつけ方なかったじゃないですか。「マークⅡ」ってなに? 車? こんなタイトルで「サヨナラが言えなくて、どこまでも歩いたね・・・」ですから。「イメージの詩」って何?って思いませんか。これはコピーですよね。優秀なコピーライターなんですよ。拓郎さんって。
もう、ここからずっと、よしだたくろうを追って行きました。
「みうらじゅん」と名前を平仮名で開いているのも、デビュー当時の「よしだたくろう」のマネですもん。はっきり言って。


国語の担任が自分の書く詩を認めてくれました。京都の風情は一年中詩を書くのに適していたから、よしだたくろう風に詩を書くのは簡単でした。たくろうの詩をパクっても誰も気づかない時代でした・・・、まあ、知りませんよ、当時の中学生ではほとんど。一人っ子でお小遣いもそこそこあって、自分の部屋で漫画誌の通販買って、詩を書いて、深夜放送聴いて、女の子にモテたい一心でした。今思えば、あの頃の僕の部屋はインターネットみたいなもので、そこに居れば何でもできるし、何でも手に入りました。それは自分のホームページ的妄想空間でした。僕は(今でもそうですが)ヤンキーとかに絡まれたことは今まで1度もありません。こういう内向的で、サブカル的な人間なので、みんな気持ち悪がって相手にしないのです(笑)。
中2の時初デートで東寺に行ったら、僕があまりにも神社仏閣について語るので、彼女(明美ちゃん)は気持ち悪がって帰ってしまいました。僕は一人家に帰り、即創った詩が「明美ちゃんがみうらじゅんに与えた大いなる影響」でした。


「イメージの詩」は6分32秒にも及ぶ長い歌です。歌詞も42番まであり、当時はサブカルの筆頭的な曲でした。しかし僕にはこの曲はメイン・カルチャーでした。この曲が出た当時よしだたくろうは和製ボブ・ディランともてはやされましたが、これもまた違っていて、たくろうはやはりたくろうであり、比較の対象はいない唯一無二の存在でした。曲のネタとかはディランからとってきたものはあるけど、その他のあり方は全然ディランじゃないですよ。いつも一人で頑張ってる、既製品ではない存在。あのたくろう節は誰にも真似できないものと信じていました。


僕はよしだたくろうにある意味で恋していました。お酒を飲み始めたのも「いつかたくろうさんとペニーレーンでバーボンを飲んでやろう」と思ったからです。その時下戸じゃかっこがつかないからね。髪を伸ばしたのもたくろうさんに近づきたいからです。この僕の髪の毛の長さ、だっれも言わないけど、当時のよしだたくろうの長さなんです。これ以上長くなるとよしだたくろうじゃなくなるから切りに行くんですよ。

よしだたくろう

みうらじゅん

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