2015年11月09日
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2015年11月09日
みうらじゅんが勝手によしだたくろうを語る不定期連載「ぼくの髪が肩まで伸びて よしだたくろう!」、アルバム『元気です。』の曲目解説B面の「また会おう」から。後半の重要なパートを当時のみうらじゅん少年を振り返りつつ、快調に解説します。
『元気です。』 SIDE B 続き
5 また会おう 作詞:岡本おさみ/作曲:吉田拓郎
きれいにうらぎろう! 僕はこの曲聴いて、飲み屋ってやつに憧れました。今でもたまに飲むとグチグチ言っちゃうのはこの歌のせい(笑)。拓郎シャウト。これも岡本おさみさんなんですね。頭のエレキ・ギターはキャロルっぽい。「女さえ抱けずに」のくだりは高校時代、一番耳に残ったところです(笑)。
「野良犬のバラード」もこの手ですね。ギターは弦をギンギンに張ったマイク・ブルームフィールド風ですね。拓郎さんはこの頃、僕の教祖だったけど、「まにあうかもしれない」とかその時々の感情に素直な詞で、この無責任さこそが青春の正体だって思ったんだ。悪いこともいっぱい教わった気がしますねぇ(笑)。
6 旅の宿 作詞:岡本おさみ/作曲:吉田拓郎
前奏のハンマリングが堪んないですね。いやぁ、これ、練習したもんです。初めは指が吊っちゃってね(笑)。当時、ユースホステル通いの僕は、この曲においてけぼり食らいました。だって、大人の世界なんだもん。それで、この「旅の宿」がどんな宿なのか想像を張り巡らせてました。ススキが河原に生えている温泉のイメージかな。「君を抱く気にもなれないみたい」って。当時はさっぱり分からなくて、今は分かる・・・。お銚子何本飲んだんでしょうね。設定は30歳ですかね。女将も気が利くいい旅館だったんでしょう。当時1泊一人1万円かくらい。部屋はそんなに広くなくて、1泊2食(税込み)。彼女は初めて温泉旅館に泊まる感じ。窓はアルミサッシじゃない。不倫ではない。JTBも使ってないし、他に目的があってその途中の宿だから、行きあたりばったりの旅じゃなかったのかな。シングルのジャケットは線路を歩いている拓郎さんで、このころから、僕も線路を歩く趣味が始まりました。数年前「勝手に観光協会」で僕も安斎肇さんと似たような写真撮りました。見て、見て。このカンジでしょ(笑)。
7 祭りのあと 作詞:岡本おさみ/作曲:吉田拓郎
この詞の中、「日々を慰安が吹き荒れて」。歌詞カードの終わりに「注:三連目”日々を慰安が吹き荒れて“は吉野弘氏の詩の一行を借りました」って載っていて当時、何のことやら僕にはよく分かんなかったんですが、一生忘れられないフレーズになりました。このギターもまた秀逸。なんていい音のギター使っているのだろうねぇ。
当時「祭り」は文化祭だくらいに思ってたんですが、何かが終わる時いつも心に流れてきます。この歌も大人になんないとね。そもそも「元気です。」ってタイトルのアルバムですが、この最後から2番目の曲でとても寂しくなってしまうのです。
そして、この「祭り」の意味が分かったのはつい最近のことでした。人生って祭りのあとの繰り返しですもんね。
8 ガラスの言葉 作詞:及川恒平/作曲:吉田拓郎
アルバムの最後はメランコリックなブルース。このリズムでのスリーフィンガー、いやぁ、当時コピーするのはリタイアしました(笑)。
作詞は及川恒平さんです。岡本おさみさんとはまた詞の世界観が違うのがいいですね。アルバムの最後にふさわしい名曲です。
こうやって聴くと「元気です。」って本当に凄いアルバム。青春時代にこのアルバムを聴くことができて、生まれたタイミングに本当、感謝しています。
どの曲が一番好きかと問われれば答えることなんてできません。1曲でも無いとアルバムが成立しなくなりますから。A面の「夏休み」とB面の「旅の宿」が対局にあって、過去と未来をバランスよく表現していますねぇ。結局本当に元気ですな歌は「馬」だけなんですよね(笑)。
『やっぱり僕は元気です』というのがこの時代、いろいろあった拓郎さんの裏に隠された本当のタイトルなんでしょうね。
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