2015年06月22日

[不定期連載]僕の髪が肩までのびて、よしだたくろう! 第2回 みうらじゅんによるアルバム『青春の詩』全曲解説

執筆者:みうらじゅん

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1970年11月1日 吉田拓郎(当時はよしだたくろう)のファースト・アルバム『青春の詩』がエレックレコードよりリリースされた。全作詞・作曲はよしだたくろう。当時のオリコン最高位は64位。


みうらじゅんによる不定期連載「僕の髪が肩までのびて、よしだたくろう!」からの抜粋。今回はみうらじゅんによるアルバム『青春の詩』全曲解説です。


1曲目「青春の詩」
1曲目から、たくろう節炸裂。僕が想う「たくろう節」って、ただ字余りソングだということじゃなくて、結論の無い問題定義を1曲の中にいくつもいくつも、早口でまくし立てる・・・その世界観のこと。
岡林信康のように結論を急がない、問題定義投げかけソング。最後に軽く薄い結論を歌うけど、その曖昧さが、たくろう節の最も好きなところです。
ディランの「風に吹かれて」もそうだけど、投げかけの羅列をして、最後に答えにならない結論を置く。「友よ、答えは風に舞っている」のように。ここでも「青春とはいったいなんだろう、その答えは人それぞれが違うだろう」って。そして「今、このひとときも」、「僕の青春」で終わる。しびれますね。
昔はLPレコードって、1回針を置いたら終わるまで聴き通したから、アルバム『青春の詩』の1曲目「青春の詩」で内臓鷲掴みされてしまって2曲目、3曲目と聴き込む体制(身構えとも言う)ができてました。


2曲目「とっぽい男のバラード」
広島では「とっぽい」ってダサイみたい意味でつかわれているので、この曲は「ダサイ男のバラード」でもある。関西では「とっぽい」とは使わないからニュアンスがよくわかりませんでした。聴けば聴くほど、とっぽい男はかっこいい男なのかと僕の中では強引に解釈されてしまいました。ある時ある場所で風俗嬢に「あなた、とっぽいわね!」って言われた時、この歌が瞬間的に脳裏をよぎり、困惑したことを思い出します。あっ、それは東京でのことだから褒められたってことなんですね!


3曲目「やせっぽちのブルース」
「お前さんどこからとんできたの」
「知らない街でコ・イ・ヲ・シ・テ~」
「ふられてコ・ノ・マ・チ・ヘ~」
「キ・タ・ア・ッテ・イ・ウ・ノ・カァ・イ~」
って都都逸ですよね。「お前さん」という言い方も江戸的だし、この言い方をブルースに使うのも斬新だった。改めて聴くと新たな発見がありますね。当時はそんなこと思わなかったけど。


4曲目「野良犬のブルース」
「やせっぽちのブルース」「野良犬のブルース」と2曲ブルースが続く。僕は痩せていたからこの「やせっぽちのブルース」は歌えたけど、太っちょの同級生がこれを歌うと死ぬほど似合わなかった。この時期僕はブルースって何かよく分からないまま聴いていた。淡谷のり子もブルース歌ってたし。(淡谷のり子はブルースの女王と呼ばれていた)黒人霊歌を誤解していた。ただ3つのコードを弾いて即興で歌うこと=ブルースをこの2曲から学びました。黒人→白人→淡谷のり子→よしだたくろう→みうらじゅんと流れてきたのが僕の中のブルースの歴史です。


5曲目「男の子・女の子(灰色の世界Ⅱ)」
前回も話した「男の子・女の娘(灰色の世界Ⅱ)」は郷ひろみより(1972年8月)たくろうさんの方が先ですから、念のため。これってボブ・ディランの「プレイボーイ&プレイガール」意識したのでしょうねぇ、きっと。僕は最近、ブートレッグ・シリーズで聴いて知ったので、このころにこの曲の情報がはたしてあったかどうか。誰かがカバーしていたのかも知れません。
ポップス調の曲で、軽く意見が合わないだけの彼と彼女を「灰色の世界」まで格上げしてしまうところが凄いしカッコいい。今でも中沢厚子さんは謎の女です。会ってみたい。きっとサラサラ真ん中わけのセミ・ロングで化粧はしていない、栗田ひろみ系の美女だったろうと思っています。


6曲目「兄ちゃんが赤くなった」
これもまた名曲! 僕は一人っ子だったから、この曲に登場する「兄ちゃん」に憧れた。兄ちゃんがふられて泣いてるところを弟目線で見ている、
そんなたくろうの弟感がいい。たくろうの作る歌詞は全て等身大(全て自分にイコール)で
ストレートで、身近で、個人的であった。それが青春ノイローゼまっただ中のみうらじゅん少年に完全オーバーラップしていたのだな。ここでアナログ盤だとA面が終了します。


7曲目「雪」
ここからレコードひっくり返してB面になりますね。
「雪」??? 見知らぬ街の見知らぬ女性の後をつけて「早くお帰り坊や」って追い返されるストーカーソングのはしりの曲。「ゆぅっき」と最初に歌ってしまうたくろう節。この頭の「ゆぅっきでした」に一発でやられてしまいました。


8曲目の「灰色の世界Ⅰ」9曲目の「俺」そして10曲目「こうき心」と続くわけだけど、たくろうは「俺」と「僕」と「おいら」と「私」と「自分」の使い分けが微妙に上手かった。
おいらみたいに部活もやってない人間を、おいらから私へ、私から自分へ、自分から俺へと変えてくれた。街を出たのはたくろうさんのせい。金沢へ家出しました。「こうき心」のせい。「俺」になったせい。


11曲目「今日までそして明日から」
12曲目「イメージ詩」」
「今日までそして明日から」「イメージの詩」。これって凄すぎる。ここまで聴いてまたA面にひっくり返すか、B面から聴くか、一旦止めて考えるか、自分で歌うか悩む。
「今日までそして明日から」も問題定義投げかけソング。
この5フレットでカポする高いポジションでのギターの音、模範的なハンマリング奏法、Fのハーモニカの高い「ピー」という音、すべてが理想的な音になっていますね。
「イメージの詩」は前回お話したとおりです。人生を変えさせられた一曲です。


みうらじゅんがよしだたくろうになる時、当時のよしだたくろうファンはその歌を完全コピーしていたけど、中3のみうらじゅんはよしだたくろうそのものになりたかったから、コピーではなく、あくまでもオリジナル曲を毎日作っていた。夜中に妄想で書いたラブレターを翌朝捨てられない自分はその時、はじめてよしだたくろうになれたと思ったのでした。
(みうらじゅん)

よしだたくろう

みうらじゅん

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