2018年09月21日
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2018年09月21日
1972年9月21日、南沙織の「哀愁のページ」がリリースされた。
5枚目のシングルで初のスローバラードに挑戦。冒頭の英語のセリフに導かれるように展開される大人びた世界、前のシングル「純潔」の B面曲「素晴しいひと」の路線をより深化させている。有馬三恵子と筒美京平のコンビはデビュー曲「17才」の時点から従来の歌謡曲に ない斬新な楽曲を彼女に提供してきたが、2年目にして自分たち が確立したアイドル・ポップスの世界をさらに新たな段階へと展開させ ていることには改めて驚きを隠せない。
現在の視点で振り返った時に重要なのは、この曲が後のシティ・ポップ/AOR路線に繋がる“メロウ・サウンド”の原点であるということだろう。続いてアルバム『早春のハーモニー』収録曲「ふるさとのように」を改詞・改題して「早春の港」としてシングル化、テンポやビー ト感はややアップしたが洗練されたサウンドは継承された。73年暮れの「ひとかけらの純情」では男女混声のコーラスを配してカーペンターズを思わせる世界を展開、翌年の「女性」では高田弘による鮮やかなストリングス・アレンジが冴え渡る3連バラードとなった。
1972年の筒美京平はクリエイティヴィティの最初のピークにあり、ヒットメーカーとして質・量ともに充実していたのはもちろんのこと、平山三紀、堺正章、伊東ゆかりといった面々の傑作アルバムに楽曲を提供した。また特筆すべきは南沙織の所属したCBSソニーから自身の名義による2枚のアルバム『筒美京平の響き』『青春のハーモニー』をリリースしていること。いずれもオーケストラ・リーダーとしてのインストルメンタル作品だが、特に後者では書き下ろし曲やカヴァー曲も含む構成で、ポール・モーリアやバート・バカラックを彷彿させるイージーリスニング・サウンドを聴かせている。
さて、日本の音楽業界で“メロウ”という言葉が普及したきっかけのひとつと思われるのが、1975年のオリビア・ニュートン=ジョンの大ヒット曲「そよ風の誘惑」の原題“Have You Never Been Mellow”にこの単語が含まれていたことである。この曲で世界的なブレイクを果たしたオリビアだが、彼女の爽やかアイドル的な路線はむしろ後輩の太田裕美らに影響を及ぼしたものの、南沙織自身はこの年以降フォーク/ニューミュージック系ソングライターの楽曲提供を受けてさらに成熟した世界を目指していく。
そんな後期の作品群にはジャニス・イアンの未発表曲に松本隆が詞をつけた「哀しい妖精」などもあるが、何といっても代表作は尾崎亜美の楽曲提供を受けた「春の予感」であろう。化粧品メーカーのキャンペーン・ソングとなったこの曲のサブタイトルは“I've been mellow”であり、尾崎がオリビア・ニュートン=ジョンを意識したことは彼女が杏里に提供した「オリビアを聴きながら」からも明らかである。
南沙織「哀愁のページ」『早春のハーモニー』 「早春の港」「ひとかけらの純情」「女性」 写真提供:ソニー・ミュージックダイレクト
≪著者略歴≫
榊ひろと(さかき・ひろと):音楽解説者。1980年代より「よい子の歌謡曲」「リメンバー」等に執筆。歌謡曲関連CDの解説・監修・選曲も手掛ける。著書に『筒美京平ヒットストーリー』(白夜書房)。
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