2017年12月19日

1977年の本日、ピンク・レディーの「UFO」がオリコン・チャートの1位を獲得

執筆者:丸芽志悟

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1977年の本日12月19日、オリコン・チャートの1位に立ったのは、ピンク・レディー6枚目のシングルとなる「UFO」である。

またも私事で恐縮だが、先日開催した「歌のない歌謡曲」のレコードをかけまくるイベントでこの曲のカラオケ・ヴァージョンを流したところ、当時まだこの世に生まれていなかったダンサーA嬢が、嬉々として「あの振り」をやりながら歌い始めるという光景が展開され、特大ヒット曲の持つ神秘的な力を思い知らされたばかり。それだけ、「ピンク・レディーの新曲がリリースされること」は当時を生きて来た者にとってはわくわくする事件であり、無意識のうちに次の世代へと遺伝されてきたわけである。特にこの曲の場合は、ときめき状態MAXのタイミングだったことを否定のしようがない。


前週1位の座に立っていたのは、テレビ的狂騒と無縁の場所にいながら万人の心を揺さぶった中島みゆきの初の自唱大ヒット曲「わかれうた」だったが、その更に1週前にはPLの「ウォンテッド(指名手配)」がなんと12週目の1位をキープしており、その前の1位曲は驚くなかれ、PLの「渚のシンドバッド」だったのである。まさに社会現象。「UFO」の1位は翌年2月20日になるまで続き、その後もしばらく、PL以外が1位を奪ったと思ったらその倍の期間PLが1位を奪い返すという状態が続くことになる。もっとも、「サウスポー」「モンスター」「透明人間」と続く1978年は、狂騒というより安定の時期、と見た方がいいか。


この曲に関して個人的に最も思い出深いのは、最早周知の事実となった「シングルとアルバムのヴァージョン違い」である。他にも、おなじみビクターのレーベルがこの曲から新しいデザインに変わったこととか、「UFO」の一般的な読みがいつから「ユーフォー」になったかとか(ちなみに焼きそばUFOの発売は前年からで、この曲のヒット後PLがCMキャラクターとして起用された)、興味深いポイントがいくつもあるけれど、追求してたらきりがない。


当時よく聴いていたFMの音楽番組でPLの近日発売の新曲が流れるというので、ワクワクしてテレコの録音ボタンを押して、レコードが出るまで何度も聴いた。この方法では「振り」を覚えることはできないけれど、予習することでなんとなく優越感を感じたものだった。そして、やっとの思いでレコードを買って、聴いてみたら、なんかイメージが違う。エアチェックしたカセットとの音質の違いとか、そんな大味なものではない。しかし、その「違い」を知った時、ちょっと大人になったような錯覚がした(えヘヘ)。


このシングルと同じ12月5日に、それまでの5枚のシングルとこの「UFO」のそれぞれ両面、そしてファースト・アルバムに入っていたミーとケイのソロ曲をまとめた初のベスト・アルバム『ベスト・ヒット・アルバム』がリリースされ、どちらかというとシングルチャートより大人な世界となっていたアルバムチャートでも10週間1位をキープするなど、一家に一枚もののヒットとなった。ヒット曲を一気に聴けるという便利さは、さしずめコンサートの疑似体験に近いものを当時のキッズ達に感じさせたのではないだろうか。


ともあれ、ある日友達の家に遊びに行った時彼がそのアルバムをかけていて、謎が解けた。そこに収められたヴァージョンこそ、発売前にFMで聴いたものと同じだったのである。

まず、イントロの響きが違う。アルバムヴァージョンの方がちょっときらびやかで、宇宙的なイメージを強調してある。こちらの方が「緻密にプロデュースされた」という感じがする。演奏のバランス自体は大層な違いを感じさせないが、ヴォーカルが完全に別テイク。シングル版の方が「歌い慣れている」という感じがするが、これはシングル市場での勝負を意識してのことか。つまり、どちらのヴァージョンにも捨てがたい魅力があるので、こっそりアルバムとシングルで使い分けたのではないだろうか。


翌年〜翌々年になると、沢田研二の「サムライ」がアルバムと後発シングルで全く違うテイクだったり、サザンオールスターズ「思い過ごしも恋のうち」がシングルカットに際して微妙にリミックスしてあったりと、ヴァージョン違いに気付くのに楽しみを感じるようにさえなっていた。その後、歌謡史を振り返ってみて、公式に世に出たレコードと違うヴァージョンがプロモーション用のレコードに使われている例を知ったり、もしくは再発CDにうっかり収録されたりというケースに何度も遭遇し、その度にニヤリとしているけれど、その道へと導いてくれたものこそこの「UFO」だった。まさに「謎の円盤」さまさまである。


≪著者略歴≫

丸芽志悟 (まるめ・しご) : 不毛な青春時代〜レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 5月3タイトルが発売された初監修コンピレーションアルバム『コロムビア・ガールズ伝説』の続編として、新たに2タイトルが10月25日発売された。

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